夜の淵に咲く
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穏やかな午後の産屋敷邸にて。
白い砂石が敷き詰められた庭園が見渡せるその部屋に、2人の男がいた。
「…突然無茶なお願いをして悪かったね、実弥。どうやら鬼は”彼女”が倒してくれたようだから、君も指令があるまではしばらく休んでくれ」
当主、産屋敷耀哉は目の前に正座する男、不死川実弥に向かって穏やかに話しかける。
「お館様の命とあれば何なりと。お気遣いありがとうございます」
実弥と呼ばれた男は頭を垂れる。そしてゆっくりと顔を上げその目を見て問いかける。
「ですがお館様…、あの得体の知れない娘を何故ここに連れてこさせたのですか。危険では…」
不死川は産屋敷の命令とあれば大抵のことはふたつ返事で受け入れる。しかし今回はあまりに無用心ではないかと思った。
「心配してくれているんだね。ありがとう。でも彼女は今は病人だよ、親切にしてあげないと」
ニコリと笑顔で、少し戯けたように返事をされてしまう。実弥は彼のその穏やかな、日差しのような笑顔と雰囲気に一瞬流されそうになる。しかし、いやいやと考え直してそれでは納得できないと畳み掛ける。
「奴は自分の事を忍だと言っていました。確かに身のこなしや挙動は一般人とはかけ離れていましたので、おそらく本当なのだと思います。ですが、だからこそ倒れたのもこちらを油断させる演技である可能性もあるのでは」
「ふふ、実弥は用心深いからね。とても信用しているよ」
予想外なことを言われて少しドキリとする。
「それに、実弥は人の心に敏感な優しい子だからね。確かに状況だけでは彼女は怪しい人間かも知れないけど、実弥がここに連れてきたという事は少なくとも彼女に敵意がないのを感じてたんじゃないのかい?」
「そんな理由であいつを信用なさるんですか?!」
「私は実弥を信じているからね」
曇りのない笑顔でそんな事を言ってくれる。
敬愛する当主からそんな事を言われたら満たされる気持ちになるはずだが、今回ばかりはそんなところで信じられても困ると頭を抱えた。
不死川が何と返事をして良いか分からなくなったところで産屋敷が提案した。
「ひとまず私から彼女には話を聞いてみるよ。目を覚ましたら実弥にも鴉で知らせるからね」
「御意」
もちろんだ。
不死川は彼女が目を覚まして、すぐにでもお館様に斬りかかるのではと不安は拭えない。少しでも変な真似してみたら女だろうと叩っ切るつもりだ。
できれば目を覚ますまで見張っていたいが、ここはお館様の屋敷だ。そこまで厄介になるのも気が引けた。
「突然倒れたから心配だろう?会ってあげるといいよ」
そういう事ではありません。と、不死川は出そうになった言葉を何とか飲み込んだ。
不死川の不安をよそに、産屋敷は終始にこやかにしていた。
白い砂石が敷き詰められた庭園が見渡せるその部屋に、2人の男がいた。
「…突然無茶なお願いをして悪かったね、実弥。どうやら鬼は”彼女”が倒してくれたようだから、君も指令があるまではしばらく休んでくれ」
当主、産屋敷耀哉は目の前に正座する男、不死川実弥に向かって穏やかに話しかける。
「お館様の命とあれば何なりと。お気遣いありがとうございます」
実弥と呼ばれた男は頭を垂れる。そしてゆっくりと顔を上げその目を見て問いかける。
「ですがお館様…、あの得体の知れない娘を何故ここに連れてこさせたのですか。危険では…」
不死川は産屋敷の命令とあれば大抵のことはふたつ返事で受け入れる。しかし今回はあまりに無用心ではないかと思った。
「心配してくれているんだね。ありがとう。でも彼女は今は病人だよ、親切にしてあげないと」
ニコリと笑顔で、少し戯けたように返事をされてしまう。実弥は彼のその穏やかな、日差しのような笑顔と雰囲気に一瞬流されそうになる。しかし、いやいやと考え直してそれでは納得できないと畳み掛ける。
「奴は自分の事を忍だと言っていました。確かに身のこなしや挙動は一般人とはかけ離れていましたので、おそらく本当なのだと思います。ですが、だからこそ倒れたのもこちらを油断させる演技である可能性もあるのでは」
「ふふ、実弥は用心深いからね。とても信用しているよ」
予想外なことを言われて少しドキリとする。
「それに、実弥は人の心に敏感な優しい子だからね。確かに状況だけでは彼女は怪しい人間かも知れないけど、実弥がここに連れてきたという事は少なくとも彼女に敵意がないのを感じてたんじゃないのかい?」
「そんな理由であいつを信用なさるんですか?!」
「私は実弥を信じているからね」
曇りのない笑顔でそんな事を言ってくれる。
敬愛する当主からそんな事を言われたら満たされる気持ちになるはずだが、今回ばかりはそんなところで信じられても困ると頭を抱えた。
不死川が何と返事をして良いか分からなくなったところで産屋敷が提案した。
「ひとまず私から彼女には話を聞いてみるよ。目を覚ましたら実弥にも鴉で知らせるからね」
「御意」
もちろんだ。
不死川は彼女が目を覚まして、すぐにでもお館様に斬りかかるのではと不安は拭えない。少しでも変な真似してみたら女だろうと叩っ切るつもりだ。
できれば目を覚ますまで見張っていたいが、ここはお館様の屋敷だ。そこまで厄介になるのも気が引けた。
「突然倒れたから心配だろう?会ってあげるといいよ」
そういう事ではありません。と、不死川は出そうになった言葉を何とか飲み込んだ。
不死川の不安をよそに、産屋敷は終始にこやかにしていた。