夜の淵に咲く
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満月が煌々と輝く夜。
山中を1人の男が駆けていく。
男は月光が反射する白髪と白い羽織りをはためかせながら風のように速く、人が踏み入れない山奥へと進んでいく。
「風柱ー!山道に鬼ノ目撃情報アリーー!!視察及ビ鬼ノ討伐に出立サレタシー!」
昼間、縁側に降り立った鎹鴉にはそう告げられた。
風柱と呼ばれた男ーー不死川実弥はその伝達を聞く。どうやら担当地区の山に鬼の気配があるようだ。
そしてその夜、
こうして山中を飛び回っていた。
件の山道へはもちろん赴いたが、こちらの動きを感づかれたのか、既に鬼の気配は全くなかった。
自身の血を使っておびき出そうかとも思ったが、目撃情報が誤報だった場合無闇に血を流す必要もないであろうと考え、足でひとまず鬼の痕跡を探すことにした。
人が入り込まない山道から外れた山奥にまで差し掛かる。
日の入りの際、影になる山の反対側を目指す。やつらは日の光から少しでも遠ざかろうとするだろうから。
ふと、数歩先の地面で何かが光った。何か金属のような。
こんな山奥に人工物が落ちている事を不思議に思った不死川はその場まで行き、屈んでそれを見る。
「…は?…手裏剣…?」
手で拾い上げてみる。見れば見るほどそれは手裏剣にしか見えない。本物なんて見た事ないが、ちゃんと刃は研がれ、殺傷能力のある立派な武器であった。
脳裏にはド派手に着飾った同僚が過ぎる。
「こりゃ…血か?」
暗がりですぐに気づかなかったが刃先には赤い液体が付着しているようだ。
すぐさま神経を研ぎ澄ませ、辺りの気配に集中する。
誰かいる。
「見つけたぜェ!さっさと首を切り落としてやらァ!」
気配の方に向かってすぐさま走り出す。もう少しで夜が明ける。鬼が逃げる前に日の光に晒すか、首を撥ねなくては。
その場から動く気配のない鬼に気づかれないよう、しかし迅速に近づく。
そして見つけた。
そこには、白く薄くなっていく月を背に、鬼とはとても思えない美しい女がいた。
△
全く奇妙な生き物だ。
疲れを知らないのかスピードも落ちる事なく、また傷もすぐに塞がるのか、切っても切ってもこちらに向かってくる。
しばらくすると切り落としたはずの腕が新しく生えているようだった。まったくもって出鱈目だ。
そしてその間もやはりチャクラを使うことはできなかった。
「さっき鬼がどうとか言ってましたね。あなたは鬼…なんですか?」
このままでは埒があかないと思い、こちらの体力が削られる前にその異形を縛り上げた。
今は木の幹にくくりつけてある。
「縄を解けぇー!!女ぁ!夜が明けちまうだろうがぁ!!」
異形は質問には答えずに何やら喚き始めている。
今までとは違い何かに酷く怯えているようだ。
「質問に答えて。あと、夜が明けるとどうなるんですか?…ん?」
再度問いただそうとしたところ。また別の気配を感じた。今度は人のようだ。しかもこちらに気づかれないように気配を消しているようだった。
追手?
近くに来られるまで気づかなかった。
短刀を握る手に力が入る。
相手は1人か、この鬼を利用してこの場をうまくやり過ごすか。
気配の迫ってくる方を注視する。
そこに現れたのは1人の男。夜明けの近づいた薄明かりの中でもはっきり見える白い髪をした、顔に傷のある男だった。
山中を1人の男が駆けていく。
男は月光が反射する白髪と白い羽織りをはためかせながら風のように速く、人が踏み入れない山奥へと進んでいく。
「風柱ー!山道に鬼ノ目撃情報アリーー!!視察及ビ鬼ノ討伐に出立サレタシー!」
昼間、縁側に降り立った鎹鴉にはそう告げられた。
風柱と呼ばれた男ーー不死川実弥はその伝達を聞く。どうやら担当地区の山に鬼の気配があるようだ。
そしてその夜、
こうして山中を飛び回っていた。
件の山道へはもちろん赴いたが、こちらの動きを感づかれたのか、既に鬼の気配は全くなかった。
自身の血を使っておびき出そうかとも思ったが、目撃情報が誤報だった場合無闇に血を流す必要もないであろうと考え、足でひとまず鬼の痕跡を探すことにした。
人が入り込まない山道から外れた山奥にまで差し掛かる。
日の入りの際、影になる山の反対側を目指す。やつらは日の光から少しでも遠ざかろうとするだろうから。
ふと、数歩先の地面で何かが光った。何か金属のような。
こんな山奥に人工物が落ちている事を不思議に思った不死川はその場まで行き、屈んでそれを見る。
「…は?…手裏剣…?」
手で拾い上げてみる。見れば見るほどそれは手裏剣にしか見えない。本物なんて見た事ないが、ちゃんと刃は研がれ、殺傷能力のある立派な武器であった。
脳裏にはド派手に着飾った同僚が過ぎる。
「こりゃ…血か?」
暗がりですぐに気づかなかったが刃先には赤い液体が付着しているようだ。
すぐさま神経を研ぎ澄ませ、辺りの気配に集中する。
誰かいる。
「見つけたぜェ!さっさと首を切り落としてやらァ!」
気配の方に向かってすぐさま走り出す。もう少しで夜が明ける。鬼が逃げる前に日の光に晒すか、首を撥ねなくては。
その場から動く気配のない鬼に気づかれないよう、しかし迅速に近づく。
そして見つけた。
そこには、白く薄くなっていく月を背に、鬼とはとても思えない美しい女がいた。
△
全く奇妙な生き物だ。
疲れを知らないのかスピードも落ちる事なく、また傷もすぐに塞がるのか、切っても切ってもこちらに向かってくる。
しばらくすると切り落としたはずの腕が新しく生えているようだった。まったくもって出鱈目だ。
そしてその間もやはりチャクラを使うことはできなかった。
「さっき鬼がどうとか言ってましたね。あなたは鬼…なんですか?」
このままでは埒があかないと思い、こちらの体力が削られる前にその異形を縛り上げた。
今は木の幹にくくりつけてある。
「縄を解けぇー!!女ぁ!夜が明けちまうだろうがぁ!!」
異形は質問には答えずに何やら喚き始めている。
今までとは違い何かに酷く怯えているようだ。
「質問に答えて。あと、夜が明けるとどうなるんですか?…ん?」
再度問いただそうとしたところ。また別の気配を感じた。今度は人のようだ。しかもこちらに気づかれないように気配を消しているようだった。
追手?
近くに来られるまで気づかなかった。
短刀を握る手に力が入る。
相手は1人か、この鬼を利用してこの場をうまくやり過ごすか。
気配の迫ってくる方を注視する。
そこに現れたのは1人の男。夜明けの近づいた薄明かりの中でもはっきり見える白い髪をした、顔に傷のある男だった。