造花の傀儡
名前変換
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「……ここ、は…」
目を覚ますと随分と既視感のある部屋の中に寝かされていた。
伽藍堂の広い部屋に、白い壁、白いベッドだけ。窓もない。何もない部屋。
目が覚めた途端、広さとは反対に気が狂いそうな圧迫感を感じた。
体を起こそうとすると金縛りのように動かず、倦怠感が酷い。
ーー苦しい…。
何かの毒か、術か…。
追手の霧隠れの忍びを無我夢中で倒したが、こちらも傷を負い、出血が多く意識が朦朧としたのを思い出した。
首と視線だけわずかに動かして自身の体を見たが、既に完璧な処置がされた後のようだった。
「目が覚めたようだな」
突然気配もなく声がした。
視線を向ける。
部屋の扉から1人の男が突然入ってきた。
ーーこの声…
顔は覚えていない。
でもその声は忘れなかった。
「か、カゲツ…?」
砂隠れに自分を逃してくれた…。
あの時とは違い忍服ではなく白衣に身を包んでいた。
雰囲気も違う気がした。
「あぁ。懐かしいなその名前を聞くのも。…愚かな男だった」
その答えから別人なのだとわかった。。
「あなたは、誰?」
男はこちらに近づいてきて横に立った。
「お前を作ったアサヅキだ。168。カゲツは私の双子の兄だ」
△
サソリは本部の資料室にいた。
名前を攫ったのは月隠れの残党とみて間違い無いだろうと考えた。
名前が砂隠れに保護された際、月隠れはほぼ壊滅状態だったと聞いたが。
報告書にも現在の手掛かりになるようなことは書かれていなかった。
「くそっ…‼︎何かないのか‼︎」
バンっ!と乱雑に資料の山に手をついた。テーブルから何枚か書類が落ちた。
サソリはひどく焦った。これ以上手を拱いていては上層部の妨害に遭うだろう。
何より名前の身を案じた。
「お前らしくないなサソリ」
「…!、三代目ーー」
そこに現れたのは風影であった。
「…何の用だ?」
サソリは上層部同様、名前の救出に反対の姿勢だった三代目に、話すことはないと言いたげに視線を向けた。
「落ち着け、そう睨むな」
風影はサソリのそばに寄ると散らばっている書類の内容に気がついた。
サソリがハッとするが、風影が手で制した。
「そうか、奴らまだしぶとく生き残っていたか。名前は奴らに?」
「それを聞いてどうする?」
「俺も協力しよう」
「なんだと?」
先程の話し合いからは到底信じられない発言だった。
「もちろん極秘にだ。私とお前だけで動く」
「風影自ら出ようってのか?そんな無理ーー」
「安心しろ、上役達にはお前を納得させるため少しお前と出るといってある。馬鹿な爺達だ。完全に信じ込んでいる。だが、あまり長い時間はないぞ」
風影はあの場で押し問答するよりも、いったん元老院に賛同したふりをした方が動きやすいと判断した。
「…俺はいい。だが万が一失敗して、あんたが里の信頼を損ねるようなことになれば里の体制自体に歪みが生じるぞ。何故そこまで…」
風影は資料から目を離し、サソリを見た。
「お前も感じているだろう?この里の危うさを…。もともと資源の少ないこの地では他の五大国とやり合うには条件が悪い」
「…わかっている」
長引く大戦は少しずつこの国を足元から揺さぶっていた。削られる兵力、その度に補填される若い命。弱体化を悟られぬよう行われる無理な作戦…。負の連鎖だった。
「しかしお前が隊長となり、名前が副隊長として補佐するようになってから作戦の成功率が格段に上がった。お前達は2人一緒でなくては困るのだ」
「…」
「何よりサソリ、お前には私の後を継いで風影になってほしい」
「は?」
予想外の言葉に思わず面食らった。
開いた口が塞がらぬままサソリは三代目を凝視した。
「風影となった後にも、お前には名前が必要であろう?名前はお前が里を守りたい一番の理由だ」
「ちょっと待て、何を勝手に…」
「俺はもう長くないのだ。もうじき病に蝕まれる」
「?!」
風影の息のかかったほんの一部の人間しか知らない事実であった。元老院すらこの事実は把握していない。
「お前しかいないのだ。この時代遅れの里の上層部たちの言いなりにならない、優秀な…新しい時代の指導者はお前しかいない。名前と2人で里の未来を救って欲しい」
「…」
三代目はサソリを正面から見据えた。
一方サソリは言いたいことはたくさんあった。
里の未来。風影の病…。
しかし今は時間が惜しかった。それに風影の協力を仰ぐ以外に道は残されていない。
「わかった。ーーひとまずあんたを信用する。話はそれからだ」
「今はそれでいい」
風影は満足そうに頷いた。
そして真剣な顔つきになり言った。
「月隠れについては以前カゲツという男からいくつか手がかりを聞いた。失敗はできないぞ。準備をして直ぐに発つ」
「いつでもいい、準備はできている」
ーーー必ず名前を取り戻す。
目を覚ますと随分と既視感のある部屋の中に寝かされていた。
伽藍堂の広い部屋に、白い壁、白いベッドだけ。窓もない。何もない部屋。
目が覚めた途端、広さとは反対に気が狂いそうな圧迫感を感じた。
体を起こそうとすると金縛りのように動かず、倦怠感が酷い。
ーー苦しい…。
何かの毒か、術か…。
追手の霧隠れの忍びを無我夢中で倒したが、こちらも傷を負い、出血が多く意識が朦朧としたのを思い出した。
首と視線だけわずかに動かして自身の体を見たが、既に完璧な処置がされた後のようだった。
「目が覚めたようだな」
突然気配もなく声がした。
視線を向ける。
部屋の扉から1人の男が突然入ってきた。
ーーこの声…
顔は覚えていない。
でもその声は忘れなかった。
「か、カゲツ…?」
砂隠れに自分を逃してくれた…。
あの時とは違い忍服ではなく白衣に身を包んでいた。
雰囲気も違う気がした。
「あぁ。懐かしいなその名前を聞くのも。…愚かな男だった」
その答えから別人なのだとわかった。。
「あなたは、誰?」
男はこちらに近づいてきて横に立った。
「お前を作ったアサヅキだ。168。カゲツは私の双子の兄だ」
△
サソリは本部の資料室にいた。
名前を攫ったのは月隠れの残党とみて間違い無いだろうと考えた。
名前が砂隠れに保護された際、月隠れはほぼ壊滅状態だったと聞いたが。
報告書にも現在の手掛かりになるようなことは書かれていなかった。
「くそっ…‼︎何かないのか‼︎」
バンっ!と乱雑に資料の山に手をついた。テーブルから何枚か書類が落ちた。
サソリはひどく焦った。これ以上手を拱いていては上層部の妨害に遭うだろう。
何より名前の身を案じた。
「お前らしくないなサソリ」
「…!、三代目ーー」
そこに現れたのは風影であった。
「…何の用だ?」
サソリは上層部同様、名前の救出に反対の姿勢だった三代目に、話すことはないと言いたげに視線を向けた。
「落ち着け、そう睨むな」
風影はサソリのそばに寄ると散らばっている書類の内容に気がついた。
サソリがハッとするが、風影が手で制した。
「そうか、奴らまだしぶとく生き残っていたか。名前は奴らに?」
「それを聞いてどうする?」
「俺も協力しよう」
「なんだと?」
先程の話し合いからは到底信じられない発言だった。
「もちろん極秘にだ。私とお前だけで動く」
「風影自ら出ようってのか?そんな無理ーー」
「安心しろ、上役達にはお前を納得させるため少しお前と出るといってある。馬鹿な爺達だ。完全に信じ込んでいる。だが、あまり長い時間はないぞ」
風影はあの場で押し問答するよりも、いったん元老院に賛同したふりをした方が動きやすいと判断した。
「…俺はいい。だが万が一失敗して、あんたが里の信頼を損ねるようなことになれば里の体制自体に歪みが生じるぞ。何故そこまで…」
風影は資料から目を離し、サソリを見た。
「お前も感じているだろう?この里の危うさを…。もともと資源の少ないこの地では他の五大国とやり合うには条件が悪い」
「…わかっている」
長引く大戦は少しずつこの国を足元から揺さぶっていた。削られる兵力、その度に補填される若い命。弱体化を悟られぬよう行われる無理な作戦…。負の連鎖だった。
「しかしお前が隊長となり、名前が副隊長として補佐するようになってから作戦の成功率が格段に上がった。お前達は2人一緒でなくては困るのだ」
「…」
「何よりサソリ、お前には私の後を継いで風影になってほしい」
「は?」
予想外の言葉に思わず面食らった。
開いた口が塞がらぬままサソリは三代目を凝視した。
「風影となった後にも、お前には名前が必要であろう?名前はお前が里を守りたい一番の理由だ」
「ちょっと待て、何を勝手に…」
「俺はもう長くないのだ。もうじき病に蝕まれる」
「?!」
風影の息のかかったほんの一部の人間しか知らない事実であった。元老院すらこの事実は把握していない。
「お前しかいないのだ。この時代遅れの里の上層部たちの言いなりにならない、優秀な…新しい時代の指導者はお前しかいない。名前と2人で里の未来を救って欲しい」
「…」
三代目はサソリを正面から見据えた。
一方サソリは言いたいことはたくさんあった。
里の未来。風影の病…。
しかし今は時間が惜しかった。それに風影の協力を仰ぐ以外に道は残されていない。
「わかった。ーーひとまずあんたを信用する。話はそれからだ」
「今はそれでいい」
風影は満足そうに頷いた。
そして真剣な顔つきになり言った。
「月隠れについては以前カゲツという男からいくつか手がかりを聞いた。失敗はできないぞ。準備をして直ぐに発つ」
「いつでもいい、準備はできている」
ーーー必ず名前を取り戻す。