造花の傀儡
名前変換
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霧隠れの里に着いたのは風の国を出発してから2日目の夜だった。
無事潜入の任務についていた暗部の男と合流、闇とともに人知れず霧隠れの里を脱出した。
監視がついていたようだが上手くかい潜り、戦闘は避けられた。
名前率いる小隊は里を出て、森の中をしばらく移動した。
水の国の国境ももうすぐで出られるだろうというところで、名前は足を止めて小さく手をあげて皆に合図した。
「皆、少しここで休みます。私は結界を張ってくるので各自それまで警戒を」
「了解」
皆昼夜問わず走り続けて蓄積した疲労もかなりのものだった。
名前はクナイを四方に投げ、そのあと結界の巻物を広げた。
印を結んで完成だ。これで敵に見つかったとしても逃げる時間が稼げるだろう。土の中も抜かりない。
「名前副隊長、迎えにきてくださってありがとうございます」
振り向くと狐の面を着けた若い男がいた。
潜入の任務についていた暗部の忍びだった。
「お礼なんて、潜入任務本当に大変でしたね。間に合ってよかったです」
「正直雲行きが怪しくなってからは生きた心地はしませんでしたが…傀儡部隊が救出に来てくれると聞いた時は安心しました」
面をしているため表情は見えないが、頭を掻きながら話す青年は恥ずかしそうにして見えた。
部下の中には他里の出身でこの地位に就いた名前のことを快く思っていない者もいることを本人は知っていた。
なのでこんな風に感謝されるとなんだかむず痒かった。
「国境を越えるまで油断はできませんが、必ず帰りましょう。私が必ず送り届けます」
「名前副隊長…」
「おいー、そんなに副隊長のこと見つめてるとおっかない鬼隊長に絞られるぜ」
小隊のメンバーの1人がいつの間にか近づいてきてニヤニヤとした顔で男の肩を掴んだ。
「な…そんなんじゃねぇ!…カッコいいなって思っただけだ」
「だからそういうのだって」
「もー!あんたたち静かにしてよ!副隊長が結界張ってくれた意味ないでしょー!」
皆少し緊張が溶けたのか、僅かな時間だが和やかな雰囲気だった。
名前は里の皆が好きだった。
自分のことを煙たがるものも多いが、誰もが里のため、自分の守りたい人のために命をかけているのを毎日感じる。副隊長として責務を負った今、彼らを守りたいと強く思うようになった。
名前も少し休もうと思い皆の方に歩いていった。
その時風が吹いた。
突然、目の前に全身を黒い服で覆った背の高い男が現れた。
「「!!!」」
「…ク…ハチ…」
男が何か呟いた。
名前がすぐさまクナイを投げた。
しかしクナイが届く前に男は消えた。
「え?!消え…今のは…?!」
「全く気配を感じなかった!結界は破られていないのになぜ?!」
「霧隠れの追手か?!」
皆今までに経験したことのない突然の不可解な出来事に動揺した。
「皆さん落ち着いて、結界は無意味なようです。ここから出ます」
結界の外に先ほどの男の気配がする。
しかし一向に何か仕掛けてくる気配がない。
狙いが全くわからなかった。
なので名前はまず自分が標的になるように仕向けようと考えた。
「私が先に出ます。合図をしたらーー」
すると予想に反して暗闇から男が姿を現わした。
「待て、話があるだけだーー」
男は攻撃する気配もなくただそこに佇み、異様な雰囲気を漂わせていた。
「…話し、ですか…」
男は殺気もなくこちらの様子を見ているだけだった。
我々を攻撃する以外に何か狙いがあるのか。
しかしゆっくり目的を探る時間もないと判断し、やはりここは撤退しようと名前が思ったその時、男が口を開いた。
「霧隠れの追手がもうすぐこちらに来るぞ」
「!」
「俺が場所を教えたからな」
ーーしまった!時間稼ぎだった…!
名前は敵を見据えたまま隊員に告げた。
「副隊長命令です。今すぐ最短距離で国境に全速で向かってください」
「な!我々も戦います!」
誰がどう見てもいくら副隊長と言えど、1人では
追手を返り討ちにすることは難しいと感じた。
彼らは機密情報を絶対漏らさないよう精鋭を寄越してきたはずだ。
「国境で落ち合いましょう。この男を始末したらすぐ行きます」
「しかし!」
「命令と言ったはずです。極秘情報を持っている彼を守るのが最優先です」
忍びとして至極真っ当な名前の命令に皆押し黙る。そんな隊員の様子を見て名前は安心させるようにふと笑った。
「小隊長に後の指揮は任せます。大丈夫」
それと同時に名前は巻物から一華を口寄せした。
「…っどうかご無事で…!」
一瞬で隊員は居なくなり、そこには2人だけとなった。
「俺を殺す?やめておけ時間の無駄だ。それよりこうもうまくいくとはな」
名前はしゃべる男に構わず一華を操り、装備の刀で攻撃した。
男はまたクナイを避けた時のように消えてしまった。
ーーこれは何かの血継限界?
呼吸を整えて男の気配を探る。
「安心しろ、俺はお前を殺さない」
「!!」
すぐ後ろで声がした。名前はその場からすぐさま飛び退いた。こんなにも簡単に後ろを取られてさすがに動揺した。
しかも姿が見えない時は気配が一切しない。
「お前には一緒に来て欲しいんだ」
「断る!もう話を聞くつもりもない!お前を始末する!」
これ以上相手のペースに飲まれる前にケリをつけようと思った。
しかし、その時遠くから…僅かだが別の気配を感じた。
「そう言うと思ったから霧隠の忍びを呼んだのさ。せいぜい頑張れ。くれぐれも死ぬなよ」
それを聞いて名前は黙ってその男に背を向けた。そして予備の傀儡を全て口寄せし、追手を迎え撃つ準備をした。
ここで足止めしなくては隊員たちが危ない。
「死ぬわけない。私はーー」
いつだって彼のいる里に帰るのだ。
名前は追手を迎え撃った。
無事潜入の任務についていた暗部の男と合流、闇とともに人知れず霧隠れの里を脱出した。
監視がついていたようだが上手くかい潜り、戦闘は避けられた。
名前率いる小隊は里を出て、森の中をしばらく移動した。
水の国の国境ももうすぐで出られるだろうというところで、名前は足を止めて小さく手をあげて皆に合図した。
「皆、少しここで休みます。私は結界を張ってくるので各自それまで警戒を」
「了解」
皆昼夜問わず走り続けて蓄積した疲労もかなりのものだった。
名前はクナイを四方に投げ、そのあと結界の巻物を広げた。
印を結んで完成だ。これで敵に見つかったとしても逃げる時間が稼げるだろう。土の中も抜かりない。
「名前副隊長、迎えにきてくださってありがとうございます」
振り向くと狐の面を着けた若い男がいた。
潜入の任務についていた暗部の忍びだった。
「お礼なんて、潜入任務本当に大変でしたね。間に合ってよかったです」
「正直雲行きが怪しくなってからは生きた心地はしませんでしたが…傀儡部隊が救出に来てくれると聞いた時は安心しました」
面をしているため表情は見えないが、頭を掻きながら話す青年は恥ずかしそうにして見えた。
部下の中には他里の出身でこの地位に就いた名前のことを快く思っていない者もいることを本人は知っていた。
なのでこんな風に感謝されるとなんだかむず痒かった。
「国境を越えるまで油断はできませんが、必ず帰りましょう。私が必ず送り届けます」
「名前副隊長…」
「おいー、そんなに副隊長のこと見つめてるとおっかない鬼隊長に絞られるぜ」
小隊のメンバーの1人がいつの間にか近づいてきてニヤニヤとした顔で男の肩を掴んだ。
「な…そんなんじゃねぇ!…カッコいいなって思っただけだ」
「だからそういうのだって」
「もー!あんたたち静かにしてよ!副隊長が結界張ってくれた意味ないでしょー!」
皆少し緊張が溶けたのか、僅かな時間だが和やかな雰囲気だった。
名前は里の皆が好きだった。
自分のことを煙たがるものも多いが、誰もが里のため、自分の守りたい人のために命をかけているのを毎日感じる。副隊長として責務を負った今、彼らを守りたいと強く思うようになった。
名前も少し休もうと思い皆の方に歩いていった。
その時風が吹いた。
突然、目の前に全身を黒い服で覆った背の高い男が現れた。
「「!!!」」
「…ク…ハチ…」
男が何か呟いた。
名前がすぐさまクナイを投げた。
しかしクナイが届く前に男は消えた。
「え?!消え…今のは…?!」
「全く気配を感じなかった!結界は破られていないのになぜ?!」
「霧隠れの追手か?!」
皆今までに経験したことのない突然の不可解な出来事に動揺した。
「皆さん落ち着いて、結界は無意味なようです。ここから出ます」
結界の外に先ほどの男の気配がする。
しかし一向に何か仕掛けてくる気配がない。
狙いが全くわからなかった。
なので名前はまず自分が標的になるように仕向けようと考えた。
「私が先に出ます。合図をしたらーー」
すると予想に反して暗闇から男が姿を現わした。
「待て、話があるだけだーー」
男は攻撃する気配もなくただそこに佇み、異様な雰囲気を漂わせていた。
「…話し、ですか…」
男は殺気もなくこちらの様子を見ているだけだった。
我々を攻撃する以外に何か狙いがあるのか。
しかしゆっくり目的を探る時間もないと判断し、やはりここは撤退しようと名前が思ったその時、男が口を開いた。
「霧隠れの追手がもうすぐこちらに来るぞ」
「!」
「俺が場所を教えたからな」
ーーしまった!時間稼ぎだった…!
名前は敵を見据えたまま隊員に告げた。
「副隊長命令です。今すぐ最短距離で国境に全速で向かってください」
「な!我々も戦います!」
誰がどう見てもいくら副隊長と言えど、1人では
追手を返り討ちにすることは難しいと感じた。
彼らは機密情報を絶対漏らさないよう精鋭を寄越してきたはずだ。
「国境で落ち合いましょう。この男を始末したらすぐ行きます」
「しかし!」
「命令と言ったはずです。極秘情報を持っている彼を守るのが最優先です」
忍びとして至極真っ当な名前の命令に皆押し黙る。そんな隊員の様子を見て名前は安心させるようにふと笑った。
「小隊長に後の指揮は任せます。大丈夫」
それと同時に名前は巻物から一華を口寄せした。
「…っどうかご無事で…!」
一瞬で隊員は居なくなり、そこには2人だけとなった。
「俺を殺す?やめておけ時間の無駄だ。それよりこうもうまくいくとはな」
名前はしゃべる男に構わず一華を操り、装備の刀で攻撃した。
男はまたクナイを避けた時のように消えてしまった。
ーーこれは何かの血継限界?
呼吸を整えて男の気配を探る。
「安心しろ、俺はお前を殺さない」
「!!」
すぐ後ろで声がした。名前はその場からすぐさま飛び退いた。こんなにも簡単に後ろを取られてさすがに動揺した。
しかも姿が見えない時は気配が一切しない。
「お前には一緒に来て欲しいんだ」
「断る!もう話を聞くつもりもない!お前を始末する!」
これ以上相手のペースに飲まれる前にケリをつけようと思った。
しかし、その時遠くから…僅かだが別の気配を感じた。
「そう言うと思ったから霧隠の忍びを呼んだのさ。せいぜい頑張れ。くれぐれも死ぬなよ」
それを聞いて名前は黙ってその男に背を向けた。そして予備の傀儡を全て口寄せし、追手を迎え撃つ準備をした。
ここで足止めしなくては隊員たちが危ない。
「死ぬわけない。私はーー」
いつだって彼のいる里に帰るのだ。
名前は追手を迎え撃った。