造花の傀儡
名前変換
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「サソリ、隊長就任おめでとうございます。それから、お誕生日おめでとうございます」
朝起きて名前の部屋に寄ってから居間に向かった。名前はすでに台所で朝食の支度をしていた。2人とも任務の入っていない休みなんて何日ぶりだろう。
「ありがとう。“名前も”誕生日おめでとう」
さらには誕生日を2人揃って祝えたのは何年ぶりだろう。もしかしたら下忍になって以来かもしれない。
今日で2人は十五になった。
「今年は大丈夫かよ?」
俺は名前を揶揄うように笑いながら聞いた。
「今年は…たぶん大丈夫です…」
このやりとりも毎年誕生日が近くなると恒例だった。
俺の6歳の誕生日…名前がうちに来て初めての誕生日だった。
△
「サソリ、チヨばあ様から今日がサソリのお誕生日だと聞きました。おめでとうございます」
「ありがとう名前!…でもこれ何???」
そこにはテーブルの上に丸い真っ黒な…
「チーズケーキです」
「ケーキ‼︎」
まさかの。なるほど名前はこういうことにはセンスないんだ。
「色々な国の誕生日の祝い方を調べました。どの国もご馳走を振る舞ったり贈り物を送ったり、中でもケーキは主流だそうで!…それに以前サソリがチーズケーキを美味しいといっていたので、本を見ながら作りました。少し焦がしてしまいましたが」
「いやいやいやこれ少しレベルじゃないよ。もう炭だよ」
ハッとした。しまった。せっかく作ってくれたのについ本音が。
名前の顔を恐る恐る見る。
名前はいつも通り特に傷ついた様子もなくキョトンとしていた。
ほっとしてその名前曰くチーズケーキの予定だったものをフォークで刺した。
カンッ。
刺さらないし。カンッていったよ。
どうする…名前はさぁ食べろと言わんばかりにこちらの様子をじっと見ている。
流石にこれを食べたら明日のアカデミーは休まないと。
そうだ。
「名前!僕にも作り方教えてよ。今からもう一回一緒に作って?そうしたら僕が今度名前の誕生日に焼いてあげられるでしょ?」
「…私の…誕生日?」
あ。
そう言われて僕は名前の誕生日がいつなのか知らないことに気がついた。
「名前の誕生日はいつなの?」
「それがわかりません。私がつくられた日を誕生日とするにしてもその日にちは聞かされたことがありません」
これは不便だ。
僕ばかりが祝われるのもフェアじゃない。
「じゃあ名前も今日が誕生日にしたらいいよ!一緒にお祝いできるでしょ?」
「サソリと…一緒に…」
「イヤだった?」
名前は首を振って言った。
「私の誕生日も…祝ってくれますか?」
僕は大きく頷いた。
△
「お、今年は大成功だな?」
今年はフルーツとクリームがたくさん載ったスポンジケーキだった。
俺はチヨばあの帰りを待たずに一口だけ食べようとフォークを刺した。
「もう少し厚みのあるものが焼き上がると思ったのですが、オーブンから出したら焼く前の半分になっていました」
スポンジのところでフォークが止まった。
やっぱり固ぇ。
力尽くでフォークを突き刺してスポンジを抉り取った。
それを口に運んだ。
ゴリゴリ。
「うん。うめぇ」
「本当ですか!よかったです」
心配そうに眉を下げていた表情から、花が咲くように笑うものだからついつい名前を甘やかしてしまう。
チヨばあには小さく切っといてやらないとな。
そんな事すると年寄り扱いするなとか言うが。
「名前」
「はい?」
「…部屋に、置いてある」
「いつの間に!ありがとうございます」
名前は弾む足取りで部屋へと向かった。
6つの誕生日以来、名前は俺に毎年何かしらのお菓子を焼いた。去年はクッキーに挑戦していたが、焼いている間に何故かクッキーの生地だったものは溶け出して全て混ざり合い、天板の上には1枚の巨大なクッキーが焼き上がっていた。もちろん割って食べた。
そして俺は毎年花を送った。
名前は花が似合う。
花瓶に生けて毎日枯れるまでその花を愛でていた。
俺はそれを見ているのが好きだから。
「サソリ、今年もありがとうございます」
花束を抱きしめ、名前が戻ってきた。
名前の頬を百合の花が撫ぜた。
その命に巡り合えたことに感謝した。
朝起きて名前の部屋に寄ってから居間に向かった。名前はすでに台所で朝食の支度をしていた。2人とも任務の入っていない休みなんて何日ぶりだろう。
「ありがとう。“名前も”誕生日おめでとう」
さらには誕生日を2人揃って祝えたのは何年ぶりだろう。もしかしたら下忍になって以来かもしれない。
今日で2人は十五になった。
「今年は大丈夫かよ?」
俺は名前を揶揄うように笑いながら聞いた。
「今年は…たぶん大丈夫です…」
このやりとりも毎年誕生日が近くなると恒例だった。
俺の6歳の誕生日…名前がうちに来て初めての誕生日だった。
△
「サソリ、チヨばあ様から今日がサソリのお誕生日だと聞きました。おめでとうございます」
「ありがとう名前!…でもこれ何???」
そこにはテーブルの上に丸い真っ黒な…
「チーズケーキです」
「ケーキ‼︎」
まさかの。なるほど名前はこういうことにはセンスないんだ。
「色々な国の誕生日の祝い方を調べました。どの国もご馳走を振る舞ったり贈り物を送ったり、中でもケーキは主流だそうで!…それに以前サソリがチーズケーキを美味しいといっていたので、本を見ながら作りました。少し焦がしてしまいましたが」
「いやいやいやこれ少しレベルじゃないよ。もう炭だよ」
ハッとした。しまった。せっかく作ってくれたのについ本音が。
名前の顔を恐る恐る見る。
名前はいつも通り特に傷ついた様子もなくキョトンとしていた。
ほっとしてその名前曰くチーズケーキの予定だったものをフォークで刺した。
カンッ。
刺さらないし。カンッていったよ。
どうする…名前はさぁ食べろと言わんばかりにこちらの様子をじっと見ている。
流石にこれを食べたら明日のアカデミーは休まないと。
そうだ。
「名前!僕にも作り方教えてよ。今からもう一回一緒に作って?そうしたら僕が今度名前の誕生日に焼いてあげられるでしょ?」
「…私の…誕生日?」
あ。
そう言われて僕は名前の誕生日がいつなのか知らないことに気がついた。
「名前の誕生日はいつなの?」
「それがわかりません。私がつくられた日を誕生日とするにしてもその日にちは聞かされたことがありません」
これは不便だ。
僕ばかりが祝われるのもフェアじゃない。
「じゃあ名前も今日が誕生日にしたらいいよ!一緒にお祝いできるでしょ?」
「サソリと…一緒に…」
「イヤだった?」
名前は首を振って言った。
「私の誕生日も…祝ってくれますか?」
僕は大きく頷いた。
△
「お、今年は大成功だな?」
今年はフルーツとクリームがたくさん載ったスポンジケーキだった。
俺はチヨばあの帰りを待たずに一口だけ食べようとフォークを刺した。
「もう少し厚みのあるものが焼き上がると思ったのですが、オーブンから出したら焼く前の半分になっていました」
スポンジのところでフォークが止まった。
やっぱり固ぇ。
力尽くでフォークを突き刺してスポンジを抉り取った。
それを口に運んだ。
ゴリゴリ。
「うん。うめぇ」
「本当ですか!よかったです」
心配そうに眉を下げていた表情から、花が咲くように笑うものだからついつい名前を甘やかしてしまう。
チヨばあには小さく切っといてやらないとな。
そんな事すると年寄り扱いするなとか言うが。
「名前」
「はい?」
「…部屋に、置いてある」
「いつの間に!ありがとうございます」
名前は弾む足取りで部屋へと向かった。
6つの誕生日以来、名前は俺に毎年何かしらのお菓子を焼いた。去年はクッキーに挑戦していたが、焼いている間に何故かクッキーの生地だったものは溶け出して全て混ざり合い、天板の上には1枚の巨大なクッキーが焼き上がっていた。もちろん割って食べた。
そして俺は毎年花を送った。
名前は花が似合う。
花瓶に生けて毎日枯れるまでその花を愛でていた。
俺はそれを見ているのが好きだから。
「サソリ、今年もありがとうございます」
花束を抱きしめ、名前が戻ってきた。
名前の頬を百合の花が撫ぜた。
その命に巡り合えたことに感謝した。