造花の傀儡
名前変換
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国境の警備が至るところで手薄だと本部で言われた。
「…私、昨日から中忍に昇格したのですが、任務は入っていますか?」
「えーっと、君は…名前だね。まだ決まってないみたいだが…」
「今日からでも国境の警備に配属してもらえませんか?」
「え?」
サソリととても顔を合わせられる気がしなかった。
サソリは私が感情のない人形だからそばに置いていてくれたのだと思うと、居た堪れない気持ちだった。
確かに私は周囲と比べて感情の起伏がないとは思っていた。いつも無表情で周りが気味悪がっているのも気付いていた。
だけどサソリは違った。こんな私の隣にいつもいてくれて、色んなことを教えてくれた。
何の色味もない世界にサソリだけが色をつけてくれて、それが何よりも幸せだった。
嬉しい、楽しい、一緒にいたい。全部サソリがいなければきっと感じなかった感情だ。
…だけどサソリの心は違ったのだろうか。
もう、約束を守ることはできないのだろうか。
△
「これはーー」
西側の国境の様子がおかしいと連絡を受けて応援にきてみれば、そこはすでに多くの犠牲が出た後で、静まり返っていた。
倒れているのは霧隠れの忍びの方が多いようだが…。
血溜まりに不快な足音が鳴る。
砂風が運ぶ風にはむせ返りそうなほどの鉄の匂いがした。
あまりの惨状に味方も随分憔悴していた。
「サソリ…なんて異端なんだ…」
「え?」
同じく援護に来ていた別の隊員を見つけたときだった。1人の男が呟いた。
視線の先には夥しい量の血溜まりと、その中に佇む小さな背中があった。髪だけでなく全て赤く染まったその人がすぐに誰かわかった。
何もせず、何も見ず、ただそこにいた。
「…」
知らない人の背中を見ているようで怖くなった。
今にも壊れそうな危うさ。
どこか遠くに行ってしまうような不安に襲われた。
ーーーおいて行かないで。
私は走った。
私がサソリといて幸せな気持ちでいれたように、サソリにもそうであってほしかった。
でも、もういい。
もうそんなこと望まないから。
だからそんな遠くに行かないで。
突然、それまで血の池に沈んで死体だと思っていた者が動いた。
サソリに向かって何か振りかぶった。
「サソリ!!」
傀儡としてでいい。
サソリのそばで、サソリのために生きたいーー
△
「名前、手を出して」
「何ですか?」
私の切り傷の治り具合を確認していたサソリが突然言った。
サソリは私が差し出した両手の上に巻物を1つ置いた。
「広げて?」
そこには“風”と書いてあった。
口寄せの巻物のようだけれど…
「名前にあげるね。これが名前を守って…僕らと一緒に戦ってくれるから」
促されるままに口寄せしてみると、美しい人形の傀儡が現れた。人の手で造られた物とは思えないほど、細部まで美しいその造形に思わず息を呑んだ。
「名前のチャクラの性質に反応して風遁の術が使えるようにしておいたよ」
「サソリはやはり天才です。こんなに素敵な傀儡をいいのですか?」
サソリは微笑んで頷いた。
「ずっと準備してたんだ。名前も傀儡師としての才能があるんだから、傀儡部隊に来た方がいいよ。僕が隊長に話しておくから、今度からこの傀儡を使って任務に行ってね」
私もそうしたいと、言おうと思っていたところだった。
サソリが巻物をしまうと同時に傀儡も消えた。
また私の手の中に渡してくれた。
今のサソリの笑顔も、初めて花をくれたときの笑顔も同じだった。
「…傀儡の名前、一華 にします」
「華?どうして?」
「なんとなく…サソリから初めていただいたのは一輪の花でしたから」
あの花はすぐに枯れてしまって悲しかったけれど、この花は私たちとずっと戦ってくれる。
それから私たちは共に傀儡部隊に入って終わらぬ夜の帳を引き裂いていった。
サソリはもう隊長にまで昇格したのは私達が十五歳の頃だった。
「…私、昨日から中忍に昇格したのですが、任務は入っていますか?」
「えーっと、君は…名前だね。まだ決まってないみたいだが…」
「今日からでも国境の警備に配属してもらえませんか?」
「え?」
サソリととても顔を合わせられる気がしなかった。
サソリは私が感情のない人形だからそばに置いていてくれたのだと思うと、居た堪れない気持ちだった。
確かに私は周囲と比べて感情の起伏がないとは思っていた。いつも無表情で周りが気味悪がっているのも気付いていた。
だけどサソリは違った。こんな私の隣にいつもいてくれて、色んなことを教えてくれた。
何の色味もない世界にサソリだけが色をつけてくれて、それが何よりも幸せだった。
嬉しい、楽しい、一緒にいたい。全部サソリがいなければきっと感じなかった感情だ。
…だけどサソリの心は違ったのだろうか。
もう、約束を守ることはできないのだろうか。
△
「これはーー」
西側の国境の様子がおかしいと連絡を受けて応援にきてみれば、そこはすでに多くの犠牲が出た後で、静まり返っていた。
倒れているのは霧隠れの忍びの方が多いようだが…。
血溜まりに不快な足音が鳴る。
砂風が運ぶ風にはむせ返りそうなほどの鉄の匂いがした。
あまりの惨状に味方も随分憔悴していた。
「サソリ…なんて異端なんだ…」
「え?」
同じく援護に来ていた別の隊員を見つけたときだった。1人の男が呟いた。
視線の先には夥しい量の血溜まりと、その中に佇む小さな背中があった。髪だけでなく全て赤く染まったその人がすぐに誰かわかった。
何もせず、何も見ず、ただそこにいた。
「…」
知らない人の背中を見ているようで怖くなった。
今にも壊れそうな危うさ。
どこか遠くに行ってしまうような不安に襲われた。
ーーーおいて行かないで。
私は走った。
私がサソリといて幸せな気持ちでいれたように、サソリにもそうであってほしかった。
でも、もういい。
もうそんなこと望まないから。
だからそんな遠くに行かないで。
突然、それまで血の池に沈んで死体だと思っていた者が動いた。
サソリに向かって何か振りかぶった。
「サソリ!!」
傀儡としてでいい。
サソリのそばで、サソリのために生きたいーー
△
「名前、手を出して」
「何ですか?」
私の切り傷の治り具合を確認していたサソリが突然言った。
サソリは私が差し出した両手の上に巻物を1つ置いた。
「広げて?」
そこには“風”と書いてあった。
口寄せの巻物のようだけれど…
「名前にあげるね。これが名前を守って…僕らと一緒に戦ってくれるから」
促されるままに口寄せしてみると、美しい人形の傀儡が現れた。人の手で造られた物とは思えないほど、細部まで美しいその造形に思わず息を呑んだ。
「名前のチャクラの性質に反応して風遁の術が使えるようにしておいたよ」
「サソリはやはり天才です。こんなに素敵な傀儡をいいのですか?」
サソリは微笑んで頷いた。
「ずっと準備してたんだ。名前も傀儡師としての才能があるんだから、傀儡部隊に来た方がいいよ。僕が隊長に話しておくから、今度からこの傀儡を使って任務に行ってね」
私もそうしたいと、言おうと思っていたところだった。
サソリが巻物をしまうと同時に傀儡も消えた。
また私の手の中に渡してくれた。
今のサソリの笑顔も、初めて花をくれたときの笑顔も同じだった。
「…傀儡の名前、
「華?どうして?」
「なんとなく…サソリから初めていただいたのは一輪の花でしたから」
あの花はすぐに枯れてしまって悲しかったけれど、この花は私たちとずっと戦ってくれる。
それから私たちは共に傀儡部隊に入って終わらぬ夜の帳を引き裂いていった。
サソリはもう隊長にまで昇格したのは私達が十五歳の頃だった。