造花の傀儡
名前変換
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護衛の任務から半年、2人はもう上忍の監督もなくなり、中忍が赴くような任務に駆り出されていた。
今日はついに2人に中忍昇格のお達しが来た。
サソリはその日の夜、久しぶりに両親の夢を見た。
二人が自分の手を引いて夕焼けの中を歩いていた。
3人とも笑顔で、優しい、とても悲しい夢だった。
「…」
目が覚めると見慣れた天井だった。そして初めは3人で寝ていた広いベッドに一人だけであった。
今までもこんなことは何度もあった。
そして大抵、そんな日に限ってチヨは任務や風影邸に呼ばれていて留守だった。
今日もそうだ。
ーーー苦しい。
心臓がまろび出てしまいそうな、気管を締め付けられてうまく息ができないような、また孤独を思い知る。
「サソリ?」
ハッとサソリは顔を上げた。
名前が扉を半分開けて心配そうにこちらを見ていた。
「気分が悪いんですか?」
ゆっくり近づいてきて、いまだベッドから抜け出せずにいるサソリの手を両手で優しく包んだ。
「…ううん、なんでもない。ねぇ名前、今日行きたいところがあるんだ。日が沈む前くらいに」
「?そんな時間にですか?いいですよ」
サソリは久しぶりに行ってみたくなった。
里の外れに砂漠が見渡せる城壁跡がある。
よく両親と夕日が綺麗だからと、3人で歩いた。
夢の中の景色を、久しぶりに見に行ってみようと思ったのだ。
△
「もう少しだよ、名前」
日が傾いて、東の空は濃紺の色に染まっていた。
2人は城壁の上に上がった。
昔は立派な城があったのだろう。戦争で崩れ落ち、今はこの城壁の一部しか残っていなかった。
他は風に運ばれてくる砂に覆われて見る影もなかった。
雲は燃えているように赤く染まり、波打った砂の大地は赤く、暗い海のようだった。
「…綺麗ですね」
名前は遠く沈む夕日を見ていた。
「サソリの髪のように、キレイな色です」
そしてサソリを振り返って微笑んだ。
名前の髪の間から夕日が透けてキラキラと輝いた。
サソリは…初めて名前が笑ったことに気がついた。
その笑顔が赤い赤い景色の中、夢の中で消えていく両親の笑顔と重なった。
途端に感じた恐怖ーー。
「ーーダメだよ」
「え?」
名前はサソリが急に険しい顔になったので驚いた。
「名前は、完璧でいてくれなきゃ、簡単に壊れちゃう僕らとは違うんだ」
「…?サソリ?何を言っているのですか?」
「名前は僕の理想の傀儡なんだ!僕の作る傀儡なんておもちゃだ!本物がつくりたいんだ!」
名前にはサソリが何を言っているのかわからなかった。
「僕は…完璧な傀儡に生まれ変わるんだ!」
ただ、月隠れにいた頃に白い服の大人達が言っていたことを思い出した。
『失敗作』
ーーー私は、サソリにとってもただの人形でしかなかったのだろうか?
「…っ」
名前は思わず走り出した。
後ろでサソリが何か言っていたが聞こえなかった。
怖かった。
施設で人形扱いされていた時よりも、カゲツが死んだと聞かされた時よりも、只々、自分の目の前の世界が色を失っていく…サソリという色を失っていくのが怖かった。
1人取り残されたサソリは、そのまま顔を両手で覆って蹲み込んだ。
「…名前はいなくならないんでしょ?約束したでしょ。ねぇーーー」
夕日は砂漠の地平線に消え、辺りは暗闇に包まれていった。
今日はついに2人に中忍昇格のお達しが来た。
サソリはその日の夜、久しぶりに両親の夢を見た。
二人が自分の手を引いて夕焼けの中を歩いていた。
3人とも笑顔で、優しい、とても悲しい夢だった。
「…」
目が覚めると見慣れた天井だった。そして初めは3人で寝ていた広いベッドに一人だけであった。
今までもこんなことは何度もあった。
そして大抵、そんな日に限ってチヨは任務や風影邸に呼ばれていて留守だった。
今日もそうだ。
ーーー苦しい。
心臓がまろび出てしまいそうな、気管を締め付けられてうまく息ができないような、また孤独を思い知る。
「サソリ?」
ハッとサソリは顔を上げた。
名前が扉を半分開けて心配そうにこちらを見ていた。
「気分が悪いんですか?」
ゆっくり近づいてきて、いまだベッドから抜け出せずにいるサソリの手を両手で優しく包んだ。
「…ううん、なんでもない。ねぇ名前、今日行きたいところがあるんだ。日が沈む前くらいに」
「?そんな時間にですか?いいですよ」
サソリは久しぶりに行ってみたくなった。
里の外れに砂漠が見渡せる城壁跡がある。
よく両親と夕日が綺麗だからと、3人で歩いた。
夢の中の景色を、久しぶりに見に行ってみようと思ったのだ。
△
「もう少しだよ、名前」
日が傾いて、東の空は濃紺の色に染まっていた。
2人は城壁の上に上がった。
昔は立派な城があったのだろう。戦争で崩れ落ち、今はこの城壁の一部しか残っていなかった。
他は風に運ばれてくる砂に覆われて見る影もなかった。
雲は燃えているように赤く染まり、波打った砂の大地は赤く、暗い海のようだった。
「…綺麗ですね」
名前は遠く沈む夕日を見ていた。
「サソリの髪のように、キレイな色です」
そしてサソリを振り返って微笑んだ。
名前の髪の間から夕日が透けてキラキラと輝いた。
サソリは…初めて名前が笑ったことに気がついた。
その笑顔が赤い赤い景色の中、夢の中で消えていく両親の笑顔と重なった。
途端に感じた恐怖ーー。
「ーーダメだよ」
「え?」
名前はサソリが急に険しい顔になったので驚いた。
「名前は、完璧でいてくれなきゃ、簡単に壊れちゃう僕らとは違うんだ」
「…?サソリ?何を言っているのですか?」
「名前は僕の理想の傀儡なんだ!僕の作る傀儡なんておもちゃだ!本物がつくりたいんだ!」
名前にはサソリが何を言っているのかわからなかった。
「僕は…完璧な傀儡に生まれ変わるんだ!」
ただ、月隠れにいた頃に白い服の大人達が言っていたことを思い出した。
『失敗作』
ーーー私は、サソリにとってもただの人形でしかなかったのだろうか?
「…っ」
名前は思わず走り出した。
後ろでサソリが何か言っていたが聞こえなかった。
怖かった。
施設で人形扱いされていた時よりも、カゲツが死んだと聞かされた時よりも、只々、自分の目の前の世界が色を失っていく…サソリという色を失っていくのが怖かった。
1人取り残されたサソリは、そのまま顔を両手で覆って蹲み込んだ。
「…名前はいなくならないんでしょ?約束したでしょ。ねぇーーー」
夕日は砂漠の地平線に消え、辺りは暗闇に包まれていった。