造花の傀儡
名前変換
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「名前、担当の上忍はどう?ちゃんと指導してくれてる?」
「はい、先生にこの前の任務では風遁の術を褒められました」
下忍になってもう二月ほど経った。
2人にはそれぞれの担当上忍がついて難易度の低い任務からこなしていた。
「今度の合同任務は大名の御子息の護衛でしたね。久しぶりにサソリと一緒に任務に行けます」
「こんな任務ばかりじゃあくびが出るよ。でも名前が一緒ならいいね」
任務は簡単なもので、お忍びで避暑地に遊びに行く大名の息子を護衛し、無事に家に返すだけだった。
移動距離は短い。半日で辿り着くだろう。
「でも明日の任務に先生たちはいませんからね。初めて会う中忍の方達と連携を取らなくてはいけないので準備はしておきましょう?」
「必要ないよ。むしろ名前と2人だけのがやりやすいな」
△
翌日、早朝に任務のために集合した。
今回は中忍3人とサソリ達下忍と合わせて5人での任務であった。
そして今回の護衛対象である大名の息子と、その従者である男と今後の手筈を簡単に話し合っていた。
「半日でお屋敷の方へ到着する予定です。その後はお屋敷の護衛を担当する忍びに引継ぎますので、それまでは我々が護衛にあたります」
人当たりの良さそうな青年の忍びが今回のリーダーだった。
「こんな子供が護衛なの?大丈夫なの?遠足じゃないんだよ?大丈夫なの?」
齢は10代後半だろうか、大名の息子が先程から同じ質問を何度もしてきてサソリのイライラが最高潮であった。
まだ子供といえどその威圧感に恐れをなした他のメンバーは、これ以上刺激しないために早々に出発することにした。
大名の息子は特殊な蹄鉄を履かせた馬に乗り、その周囲を従者とサソリたちで囲んで護衛した。
1人は離れたところから周囲を警戒していた。何かあれば合図があるはずだ。
砂風が舞い上がり名前の顔に砂がついた。
サソリはその砂を忌々しそうに見ていたが、持ち場を離れるわけにもいかないので見守ることしかできなかった。
もう何度も休憩を挟み、もう直ぐ目的地も近づこうという時だった。
「ねー君ってホントに綺麗な顔してるよねー。何歳なの?そういえば名前は?」
名前は馬に乗ったその男に話しかけられた。
「7つです。名前と申します。」
「へ?! 7才!?本当に子供じゃん!でも君大人っぽいねー。名前もかわいいね。俺は亜門だよー」
風とそれに舞う砂にイライラしていたサソリにこの光景はトドメを刺した。
2人のそばに寄ろうとした時だった。
「…?」
遠距離から警戒に当たっていた中忍の気配が突然なくなった。
「伏せろ!!」
サソリが叫んだと同時に名前は馬に乗った男を掴み、地面に引き摺り下ろした。
次の瞬間には頭上を炎が覆った。
「くそ!いつの間に?!…おい!しっかりしろ!」
中忍の男が叫ぶ。従者を庇ってリーダーの男が左半身に火傷を負っている。これでは戦うことはできないだろう。
そしておそらくもう1人はすでに殺されているだろう。
3人で戦うしかない。
「サソリ、私はリーダーの治療をします。先輩、亜門様の護衛を。従者の方は私から離れないでください」
「わかった」
サソリは返事をすると巻物を二つ取り出し、そこから傀儡を二体口寄した。
敵はまだ姿を見せていない。
周りは砂漠で見晴らしが良いのが裏目に出たか。
目的地も近づきまんまと油断したところを突かれてしまった。
「隠れるなら…下か」
一体の傀儡が雷遁の印を結び地面に両手をついた。
「待て!俺たちまで!?」
中忍の男が何か叫んだ。
あたり一帯の地面に地響きがするほどの電撃が走った。
味方の周りには既に名前が結界を張っている。
攻撃を受けまいと慌てて飛び出してきた1人をもう一体の傀儡で切った。
「ぐぅっ!ーーな、はやーー」
まだいる。あと1人。
1人は対象を殺そうと名前たちの足元から出てきた。
電撃もこない上に対象者に近づけるここは名前がすでに罠を張っていた。
「な、体が…動か…っ!!」
「結界の中には毒が撒いてあります。皆さんは後で解毒剤飲んでくださいね」
体が痺れてその場で蹲っていた亜門達はそれを聞いて顔面を蒼白とさせていた。
名前は結界の外に敵を放り出した。
そしてクナイを投げつけた。
「ぐあぁ!!こっこんな餓鬼に…っ!こ、殺して、やっ…」
「クナイに塗ったのは猛毒です…どうか安らかに」
名前は安全を確認すると結界を解いて皆に解毒剤を飲ませた。
「荒っぽいやり方ですみません、解毒剤はすぐ効きます。ここからでしたらこのままお屋敷の方へ向かいましょう。リーダーは馬に乗せて運ばせていただけないでしょうか?」
「あ、ひっ…、う、うん。いいよ」
すっかり肝の冷えた大名の息子の様子を見てサソリは鼻で笑った。
「サソリ、大丈夫ですか?」
名前はサソリに近づくと、傀儡に着いた血を砂で擦って落としていたその手を握った。
「名前の手まで汚れちゃうよ」
サソリは手を引っ込めようとしたが。名前は離さなかった。
「何言ってるんですか。もう…戻れませんから…」
サソリにはその意味が直ぐにわかった。
2人とも人を殺めたのは今日が初めてだった。
躊躇いはなかった。躊躇うはずがなかった。
そう教えられてきたし、両親を失った時に嫌と言うほど思い知ったのだ。
奪われる側になるのはもう御免だった。
「名前は絶対僕が守るよ」
「…ありがとうサソリ。でも、守られるだけは嫌です。私はあなたと一緒に戦います」
残酷な世界だった。
もう2人で、奪う側の痛みを慰め合うことしかできない。
「はい、先生にこの前の任務では風遁の術を褒められました」
下忍になってもう二月ほど経った。
2人にはそれぞれの担当上忍がついて難易度の低い任務からこなしていた。
「今度の合同任務は大名の御子息の護衛でしたね。久しぶりにサソリと一緒に任務に行けます」
「こんな任務ばかりじゃあくびが出るよ。でも名前が一緒ならいいね」
任務は簡単なもので、お忍びで避暑地に遊びに行く大名の息子を護衛し、無事に家に返すだけだった。
移動距離は短い。半日で辿り着くだろう。
「でも明日の任務に先生たちはいませんからね。初めて会う中忍の方達と連携を取らなくてはいけないので準備はしておきましょう?」
「必要ないよ。むしろ名前と2人だけのがやりやすいな」
△
翌日、早朝に任務のために集合した。
今回は中忍3人とサソリ達下忍と合わせて5人での任務であった。
そして今回の護衛対象である大名の息子と、その従者である男と今後の手筈を簡単に話し合っていた。
「半日でお屋敷の方へ到着する予定です。その後はお屋敷の護衛を担当する忍びに引継ぎますので、それまでは我々が護衛にあたります」
人当たりの良さそうな青年の忍びが今回のリーダーだった。
「こんな子供が護衛なの?大丈夫なの?遠足じゃないんだよ?大丈夫なの?」
齢は10代後半だろうか、大名の息子が先程から同じ質問を何度もしてきてサソリのイライラが最高潮であった。
まだ子供といえどその威圧感に恐れをなした他のメンバーは、これ以上刺激しないために早々に出発することにした。
大名の息子は特殊な蹄鉄を履かせた馬に乗り、その周囲を従者とサソリたちで囲んで護衛した。
1人は離れたところから周囲を警戒していた。何かあれば合図があるはずだ。
砂風が舞い上がり名前の顔に砂がついた。
サソリはその砂を忌々しそうに見ていたが、持ち場を離れるわけにもいかないので見守ることしかできなかった。
もう何度も休憩を挟み、もう直ぐ目的地も近づこうという時だった。
「ねー君ってホントに綺麗な顔してるよねー。何歳なの?そういえば名前は?」
名前は馬に乗ったその男に話しかけられた。
「7つです。名前と申します。」
「へ?! 7才!?本当に子供じゃん!でも君大人っぽいねー。名前もかわいいね。俺は亜門だよー」
風とそれに舞う砂にイライラしていたサソリにこの光景はトドメを刺した。
2人のそばに寄ろうとした時だった。
「…?」
遠距離から警戒に当たっていた中忍の気配が突然なくなった。
「伏せろ!!」
サソリが叫んだと同時に名前は馬に乗った男を掴み、地面に引き摺り下ろした。
次の瞬間には頭上を炎が覆った。
「くそ!いつの間に?!…おい!しっかりしろ!」
中忍の男が叫ぶ。従者を庇ってリーダーの男が左半身に火傷を負っている。これでは戦うことはできないだろう。
そしておそらくもう1人はすでに殺されているだろう。
3人で戦うしかない。
「サソリ、私はリーダーの治療をします。先輩、亜門様の護衛を。従者の方は私から離れないでください」
「わかった」
サソリは返事をすると巻物を二つ取り出し、そこから傀儡を二体口寄した。
敵はまだ姿を見せていない。
周りは砂漠で見晴らしが良いのが裏目に出たか。
目的地も近づきまんまと油断したところを突かれてしまった。
「隠れるなら…下か」
一体の傀儡が雷遁の印を結び地面に両手をついた。
「待て!俺たちまで!?」
中忍の男が何か叫んだ。
あたり一帯の地面に地響きがするほどの電撃が走った。
味方の周りには既に名前が結界を張っている。
攻撃を受けまいと慌てて飛び出してきた1人をもう一体の傀儡で切った。
「ぐぅっ!ーーな、はやーー」
まだいる。あと1人。
1人は対象を殺そうと名前たちの足元から出てきた。
電撃もこない上に対象者に近づけるここは名前がすでに罠を張っていた。
「な、体が…動か…っ!!」
「結界の中には毒が撒いてあります。皆さんは後で解毒剤飲んでくださいね」
体が痺れてその場で蹲っていた亜門達はそれを聞いて顔面を蒼白とさせていた。
名前は結界の外に敵を放り出した。
そしてクナイを投げつけた。
「ぐあぁ!!こっこんな餓鬼に…っ!こ、殺して、やっ…」
「クナイに塗ったのは猛毒です…どうか安らかに」
名前は安全を確認すると結界を解いて皆に解毒剤を飲ませた。
「荒っぽいやり方ですみません、解毒剤はすぐ効きます。ここからでしたらこのままお屋敷の方へ向かいましょう。リーダーは馬に乗せて運ばせていただけないでしょうか?」
「あ、ひっ…、う、うん。いいよ」
すっかり肝の冷えた大名の息子の様子を見てサソリは鼻で笑った。
「サソリ、大丈夫ですか?」
名前はサソリに近づくと、傀儡に着いた血を砂で擦って落としていたその手を握った。
「名前の手まで汚れちゃうよ」
サソリは手を引っ込めようとしたが。名前は離さなかった。
「何言ってるんですか。もう…戻れませんから…」
サソリにはその意味が直ぐにわかった。
2人とも人を殺めたのは今日が初めてだった。
躊躇いはなかった。躊躇うはずがなかった。
そう教えられてきたし、両親を失った時に嫌と言うほど思い知ったのだ。
奪われる側になるのはもう御免だった。
「名前は絶対僕が守るよ」
「…ありがとうサソリ。でも、守られるだけは嫌です。私はあなたと一緒に戦います」
残酷な世界だった。
もう2人で、奪う側の痛みを慰め合うことしかできない。