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サカズキ×ボルサリーノ

性処理のために同性を抱く。

男だらけの海軍では珍しくはない。
わっしもまた同期のサカズキと肉体関係を持っていた。

何故サカズキか。
そこに大した理由はなかった。
部屋が一緒だったし、同期の中では仲が良く、つるむことが多かったから。

”頼みやすかった”

それ以上でもそれ以下でもない。

特別な感情を抱くこともなく、どちらかが溜まってきたらそれとなく合図をし、部屋に行き事を済ませて帰る。
淡々とそれを繰り返し何十年も経った。



「もうやめんか。」

そんなだらけた性生活に唐突に終わりを告げたのはサカズキだった。
いきなりの事でわっしの心にほんの少し、動揺の波が立つ。

「…随分と急だねぇ。何かあったのかい?」

動揺を誤魔化すためにキスをしようと近づけば、それも手で防がれた。

「本当にどうしたんだぁ?」
「…。」
「黙ってちゃあ分かんねぇよ~…。」

話してごらん?と優しく声をかけて頬に手を当てる。
こうするとサカズキが甘えてくる事を知っている。
サカズキはわっしの手に頭を預けると、その重い口を開いた。

「惰性でこの関係を続けとった。」

ぽつりぽつりと少しずつ紡がれる言葉を聞き逃さないように耳を傾ける。

「何の意味もない。ただ性の処理をする関係じゃ。それ以上でも以下でもない。」
「そうだねぇ。」

余計な情なんていらない。
面倒ごとは避けて生きてきた。
それなら異性を抱けばいいだろと言われてしまえばそれまでだが。

「………最近のわしはどうもおかしい。体だけじゃあ満足できんようになってきた。」
「…。」

みなまで言わずともサカズキの言いたいことは分かった。

あぁ、なんて面倒な。

「余計な感情は邪魔じゃけぇ、もう終わりにしたほうがええと思った。」

サカズキの言う通り、感情が絡むと非常に面倒くさいし、それは避けたい。
淡々とした関係が心地良い。
それが崩れるとあれば潔く終わりにした方が…。


「だったら、恋人になっちまえばいいじゃねぇか。」


口から出た言葉。
一瞬時が止まる。


「「は?」」


二人同時に目を見開き言葉を失った。
だれが、こんな、提案を……。

「本気か?ボルサリーノ。」

名前を呼ばれ、自身が先ほどの言葉を発したのだと気づく。

というか、今は二人しかいないのだからサカズキ以外はわっししかいないだろう。
誰がって、誰だ。

混乱する頭を整理するために黙りこくっていたらサカズキが顔を覗き込んできた。

「…………今のはどう捉えたらええんじゃ?」

瞳に期待と不安の色を灯し、まっすぐとわっしを見つめる。

サカズキと関係を持つ前に抱いた女にもこんな目をするやつがいた。
ただただ面倒だと思った。熱が冷めた。

なのに……。


「そのままの意味で捉えたらいいよ。」


あぁ、もっと早く気が付けば良かった。

自分自身がサカズキ以外、相手をしなかったことに。
自分自身がサカズキ以外に欲情していなかったことに。

早い段階なら、こんな感情、お互いに消し去れたのに。


「……面倒くせぇなぁ…。」

ぼそりと呟いた落胆の声は、嬉しそうにわっしを抱きしめるサカズキの耳には届いていなかった。
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