無口な話し相手
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「……おお」
広間に入った瞬間、また昨日と同じ好奇の視線が集まるのを感じ、こわばるを得なかった。
「…すげーな、女って…」
朝から無事こっそりと着替えを手伝ってもらい、袴を履いて男装をした私は、まじまじとした視線を受け止めていた。
「…変ですか?」
「いや、決して変ではないし寧ろ似合っているぞ!美しい若侍のようだ」
「役者みたいだけどね」
「俺らより女の子が寄ってきそう…」
思い思いの感想を言われ、なんとも言えない心持ちで、覚めない夢の中の朝ごはんが始まる。
席は昨日と違い、齊藤さんの右隣になっていた。
「ごちそうさまでした!」
皆が食べ終わって号令が響き渡ったのち、沖田さんがすっと立ち上がったかと思うと皆の膳を下げ始める。
「あっ、私手伝います!」
咄嗟にそう言うと、沖田さんが私を見て口端を曲げた。
「お姫様にそんなこと、させられないでしょ」
「なっ…できます、普通に!」
私は慌てて立ち上がー――
ろうとして、
袴の裾を踏んずけてつんのめり、
皆の前で派手に転んでいた。
「…ほら、言わんこっちゃない。却って仕事が増えるよね?」
うう…
何とも言い返せず、私は項垂れた。
「すみません…」
「でも、洗い物は得意ですよ!お皿洗いを…」
食い下がる私に、憐れみのような表情を向ける沖田さん。
「そんなことするよりさ、早く帰るところを見つけて出てってくれない?」
刺々しい言葉に、さすがに私は黙り込んでしまった。
「総司、その言い方はねえだろ」
土方さんが諫めてくれるが、
沖田さんの言う通りだ。
「…すみません」
再度謝ってから、それぞれ広間を出ていく中、斎藤さんの袖を引いた。
「今度また…私と出会った桜の木のところに、連れて行ってもらえないでしょうか?」
斎藤さんは逡巡したのち、
「……掛け合ってみる」
とだけ答えて行ってしまった。