夢ならば
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考えないことはない。
私が「こっち」に来た瞬間から、鬼になったということ。
あの上等な着物。
「鬼の姫」という言葉。
血筋。
胸の、痕。
じゃあなんで、私はここに来たんだろう。
膝に顔を埋めて考えることは、なんの答えも出ないでぐるぐる回ってくる。
そんなとき、外からわいわいと声が聞こえた。
顔を上げてよく聞くと、ええじゃないか、ええじゃないかと聞き取れる。
…歴史で習ったよなあ…全然聞いてなかったから、思い出せない。
傍らで、永倉さんと原田さんが世間話をしていた。
「おい左之、お前も腹の傷に顔描いて腹踊りしてこいよ!」
ぶっ
私は思わず吹き出してしまった。
二人はぎょっとしたように私を見るけど、
申し訳ないけど、想像したら笑いが止まらない。
「っくく…いや待って…ちょ、ごめんなさ…!!」
「春ちゃんに大ウケじゃねえか左之!ほら、何ならここで踊ってやれ!」
一人で笑い続けていると、永倉さんが調子に乗る。
一方で、大きな温かい手が私の頭をなでてくれた。
見なくてもわかる、原田さんだ。
「…久しぶりだな、笑ったの」
言われて気づく。
そういえば、いつぶりに笑ったっけ。
「何があったかは聞かねえが、お前が笑ってんのは気分がいいな」
「腹踊りすればもっと笑うんじゃねえか?」
「それはやめてください…ふふっ…」
んじゃ、と言い残して、二人は花街に向かっていく。
少しだけ、元気が出たかも。
私はよし、と気合を入れて、自室に向かった。
ねえ、どうしたって、向き合うしかないんだから。
服を脱ぎ、鏡に向かう。
胸元にできていた赤い痣は、
明らかに薄く、なっていた。
それが何を意味するのか、わからない。
確かなのは、
私はこの世界では血の濃い女鬼で、
その力を使うたびに、この痣が薄くなっていくということ。
「…よし」
心の準備を、しなくちゃいけないんだ。