小指の魔法
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「いやー久しぶりだな、こうして皆揃って出掛けるのも」
永倉さんの言葉に、私は大きく頷いた。
初めて島原に行ったとき以来だ、こんなに幹部の皆が一緒にお出掛けするのは。
そこには―――斎藤さんや平助君、沖田さんの姿は、ない、けれど。
「春、はぐれんなよ?」
「あ、はい…」
原田さんにぽんと頭を撫でられてはっとすると、少し皆の輪から外れてしまっていたことに気づく。
「取り敢えず、集合場所を決めるか」
私たちは一軒の茶屋を目印に決めた。
うん、この茶屋なら私も知っている。
「さぁて、どっから廻るかな」
私は大通りを見渡した。
私の時代のお祭りみたいに、焼きそば屋さんやチョコバナナは勿論、輪投げや射的のお店もないんだなあなんて考える。
「酒だろ酒!」
「馬鹿、新八。酔っ払って浪士に出くわしたらどうする」
土方さんがたしなめるが、その声は諫めるようではなく。
「春、お前は何処に行きたい?」
原田さんが気さくに訊いてくれて、私は考える。
「うーん…せっかくだし、大文字が綺麗に見えるところに行きたいですかね」
「それじゃ、あっちだな」
原田さんは永倉さんや土方さんに軽く挨拶すると、私を連れて川辺の方へと足を向けた。
「え?あの、皆は―――」
「いいんだよ、気にしなくて」
…そういうものなんだろうか。
私たちは連れだって人混みの中を行く。
「………あの、原田さん」
「………あのよ、春」
不意に私たちの声が重なった。
「はい?」
「なんだ?」
また、重なる。
私たちは顔を見合わせて笑った。
そうして、ふっと原田さんの纏う笑顔が。
真面目になる。
「……原田、さん?」
「…お前は、そうして笑ってろ」
……え?
私が言葉を紡ぐより先に、原田さんの大きな手が私を包んだ。
「お前は刀なんか持たなくていい。そうして笑っててくれりゃそれでいい。俺は…そう、思っちまうんだが」
ぐさぐさと、原田さんの言葉が私の胸に刺さった。
「俺たちが、なんて言うつもりはねえ。俺が、守ってやる」
彼がそんな風に思っているなんて、私は思いもよらなくて。
でも、それよりも―――私は、ちゃんと笑えてなかったんだろうか。
だけどそのとき、
私は人混みの中に見知った背中を見つけたような気が、した。
「っ…ごめんなさい…」
私は気づくと原田さんの腕をほどいて駆け出していた。
「春、っ…!」
後ろで原田さんの呼び声が上がって、雑踏に消えた。
「さいと…斎藤さんっ!」
私の声も虚しく掻き消える。
歓声が上がって大文字を見ようと押し寄せる人の波に、私は潰されそうになった。
けれどそれを助けたのは―――
一本の、優しい腕だった。