無口な話し相手
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「……着いたぞ」
やっぱりほんの数分の距離、
そこに壬生寺はあった。
人の気配はあまりない。
斎藤さんの背を追っていくと、まさしく出会ったあの桜の木があった。
「……ここで」
出会ったんだよなあ、と改めて思う。
大きな桜の木は、まだ十分に花を咲かせている。
「花を見ていた」
明け方のまだ肌寒い空気を、斎藤さんの声が静かに揺らす。
「いい加減帰るかと思い下を見たら…ここに、あんたがいた」
あの日のこと。
滔々と語るけれども、やっぱりそれは漫画とかで見たタイムスリップそのもののようで。
何とも返す言葉が見つからず、私はその自分が『現れた』辺りに屈んでみる。
穴は、もちろんない。
触ってみても―――何が起きるわけでもない。
何か落ちていないかも探すけれど、
何もない。
そうして気づけば、太陽は昇り始めていたようだった。
「あっ、一君!…と、春!?」
「早いじゃねーか斎藤」
後ろから飛び込んできた声に、私はそれでも、この時間をくれた斎藤さんに心から感謝する。
「すみません…ありがとう、ございました」
次々と集まってくる幹部の方や、ほんの数人の見知らぬ方。
「おはよう、一君に…春ちゃんも」
「おう、斎藤。何か手掛かりはあったか?」
静かに首を振る斎藤さんを見て、そろそろ戻るべきかと立ち上がる。
が。
「おう、百瀬くんもいるのか!良ければ朝稽古を見ていったらどうかね?」
近藤さんの申し出により―――
私はなぜか、朝稽古を見学することになってしまったのだった。