左手のゆびきり
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ああ、やだなあ。
心は決まっていたはずなのに、胸の奥が苦しくなって。
「…好き。どうしようもなく好き」
静かな夜に、
私が嗚咽を堪える音だけが煩い。
「…春」
もう、聞けないかもしれない、私の名前を呼ぶ声。
「春」
優しく頬に触れる感触を、
どうしたらいいかわからない。
優しく向けられた視線の先には、
あの日と同じ、深海みたいに綺麗な藍色だった。
近く、近くなって。
「っ……」
それが口づけだと理解するまで数秒、
何が起きたかわからなかった。
「…ん……っ」
熱い吐息の混ざったキスに、息が苦しくなる。
「っ…ふ」
何とか息継ぎをするけれども、
またすぐに唇が塞がれる。
くらくらしそうな頭はもう、
あなたのことで、とっくに一杯だったんだ。
「斎藤、さん…」
涙が頬を伝う。
「っすまない…!」
慌てて斎藤さんの指がそれを拭き取るけど。
「そうじゃないんです。そうじゃなくて…この時代に来られて、あなたと出会えて、本当によかった」
あの日、桜の木の下で。
出会えたのがあなたで、本当によかった。
「嘘でもいいんです、約束してください。次はきっと、あなたが私を探しに来るって」
私もきっと、
あなたを探しに来たんだから。
泣きじゃくる私を、
斎藤さんはじっと見つめて。
「………約束しよう。必ず、迎えに行く」
左隣の小指が、そっと絡んだ。