手の鳴る方へ
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「元治って…いつ…」
これで気を失って、元通りならまだいい。
でも、どうしたって『今』、私は『ここ』に居る。
「…あんた、いい家の者だろう。従者と早く落ち合え」
「いい家なんかじゃないですよ!!普通の高校生で!!従者なんかいません!!」
「コウ…コーセー…?」
どんどん、彼の表情が曇っていく。
「あのっ…気づいたらここにいたんです!信じてください、私…っ!」
こんな豪華な着物を纏って、絶対に信じてくれないだろう。そんなの私でも信じないし、頭のおかしい奴だと思うだろう。
けど。
「私…未来から…来たんだと思います…」
そう、言わずにはいられなかった。
その人は、この上なくーーー肺の空気が全部出たんじゃないかと思うほど、特大の溜め息を吐いた。
そして、何を考えてるのか全く見えない無表情になり、しばらくしたのち。
「…あんた、その世迷言は絶対に口にするな。いいか?」
深海のような瞳に真っ直ぐ見つめられ、私はこくこくと頷いた。
「……ついてこい」
すたすたと踵を返して歩き始める彼についていくべく、
立ち上がろうとするもこの着物のせいで上手くいかず手まで貸してもらって、私はようやくこの、
見ず知らずの時代に立ち上がってしまったのだった。