桜の約束
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齊藤さんがいなくなって、もうどれくらいだろうか。
「…あれ?」
それは、そろそろ寝ようかと袴に手をかけたときだった。
ひりひりとした痛みを感じて、少しだけ胸元を検める。
「…なに、これ」
あの痣が赤く、燃えるように熱くなっていた。
何か良くない予感しかしない、そんな夜。
どうか何事もありませんようにーーー
そんな願いもむなしく、
「百瀬殿、おられるか!!」
巨体の島田さんが突入に近い形で訪ねてくるのは初めてだった。
「鬼が…風間らが!」
そう言う背後にはすでに、天霧の姿。
ーーー熱い。
私は枕元の刀を取ろうとする、が。
天霧のほうがよっぽど近く、その考えは容易に足蹴にされてしまった。
放り投げられ、部屋の隅へ転がる刀。
「風間も不知火も新選組に危害を加えるつもりはない。
貴女だけ、大人しくついてきてくれればいいのです」
怒りで頭がどうにかなりそうだった。
齊藤さんに教えてもらって、一緒に選んでもらって、無理矢理持たされて、大っ嫌いだった刀なのに。
いっつも、持ってたのに。
「…何をしてるの?」
胸が、焼けそうに熱い。
「っ…」
天霧は躊躇していた。
きっと策でもあったんだろう、
みんなも外で風間や不知火と戦ってるんだろう、
でもね。
私の大事なものを踏みにじる人はね、
許せないの。
身体に滾る力のままに、私は天霧に殴りかかっていた。
「むっ…!!」
「風間だっけ?呼んでよ、ここに。それともあんたの生首でも見せたほうが早い?」
本当に重くて邪魔な、大切な刀を拾って問う。
私から大事なものを奪った分だけ、あんたの大事なものも奪ってやる。
私の大切な、人ともの。
片手で天霧の首を持ち上げると、巨体はいとも容易く宙に浮く。
「貴女…やはり百瀬家の姫…っ」
苦しげな声の後、風を切る音がして微かに私の腕に痛みが走ったかと思うと、あっという間に天霧の姿はなくなっていた。
「春!無事か!?」
暫しののち、土方さんや原田さんが慌ただしく私の部屋になだれ込んできたけど、
私の部屋に横たわる重傷者は島田さんただ一人だった。
「気を失っているだけで軽傷っぽいです…少し、容体を見てます」
土方さんも原田さんも近藤さんも、
山﨑さんも井上さんも、みんな無事。
今はそれだけで十分だ。
私のせいで。