手の鳴る方へ
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なんだっけ、
何をしてたんだっけ、
熱い、
いや、冷たい?
冷たい。
多分私の意識が定かなら、
冷たい?
妙な感触に目が覚めて、
やっぱりまだ夢を見てるのかと思う。
だって、
草っぱら、だもん。
あーもう一回ぐらい意識がなくなって、そしたら友達が心配そうに覗き込んでるか、どっかの病院のベッドの上か。
そう思ってもう一度、目を瞑ったんだけど。
何一つ変わるどころか、
少し湿った草の感触が消えることはなかった。
「……ここ…」
目眩がだんだんと、ラジオのチューニングを合わせるように正常になっていく。
「どこ……?」
もはや完全にピントが合いかけているくらい鮮明になり、私はようやく身体を起こした。
ら。
人が、いた。
哀しいような、晴れ晴れしたような、何も感じていないような、本当に不思議な――
そんな顔。
そんな顔が、上を見上げていた。
なんて綺麗な顔。
そう思うと同時に、視界に違和感を覚える。
10月なのに、桜が、舞っている。
「えっ…!?」
思わずそう声を出した、その瞬間だった。
「何者だ」
その人は初めて私に気づいたようで、深い藍色の瞳を私に向けて、明確に『私に』訊いた。
待って、頭が追いつかない。
夢だとはいえ。
「っ……」
未だお尻に冷たい草の感触を感じ続けながら、その人を見る。
ゆるく結んだ黒く長い髪に、濃紺の着物。
深海のような瞳は真っ直ぐに私を見ていた。
「…あの…」
なんとか声を絞り出すけど、続く言葉がない。
ここは、どこ?
景色はさっき見ていた壬生寺、
季節は遡ったのか早まったのか、春。
さっきまで聞こえていた観光客の声はなく、友達の姿もなく、まるで私だけ切り抜かれたみたいだった。
「っあの、百瀬…百瀬春っていいます…」
恐る恐る答えると、
その人は首を傾けた。
「あんた…どっから湧いて出た?」
思いっっっきり怪訝そうな様子を隠しもせずに、その人は私を睨め下ろした。
「湧いて、って…」
状況が読めない。
互いに沈黙し、そのまま暫くの時間が経過したように思う。
「……ええと」