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「………お邪魔しました、どうぞ続けて」
奴は不機嫌な顔はどこへやら、開けたばかりの襖をすっと閉めた。
隙間から満面の笑みを見せながら。
「総司、ちがっ…!!」
急いで奴の名を呼び止める、が。
「ちょっ…斎藤さん…!」
「っ…すまな、」
危うく、手。
もう頭も真っ白になりかける。
長い沈黙の後、落ち着いたのは―――
春がどうにか自力で身体を起こしてくれたからだった。
「っもう!斎藤さんってば!」
「………ッ」
まだ頬は赤いまま、
やっと明け方に相応しい静けさが戻る。
「その…っ、すまなかった……」
どうにか謝って、俺は心を落ち着ける。
まさかこんな惨事になるとは思っていなかったのだ。
「………」
黙って、お互い逸らす目。
「…びっくりしました」
しおらしく、着物の端を気にする動作はこうしていると見紛うことなく女の
それ。
「すまない、だが……お前が目を覚ましてくれて、よかった」
「そんな…ちょっと寝すぎただけじゃないですか…」
「ちょっとではない、丸二日だ」
「ええっ、そんなに!?」
「どこか…具合の悪いところがあるのではないのか?」
「いえ別に、全く……っていうか私、どうしたんでしたっけ?」
ようやく本当に、普段の会話になんとなく直る。
それが嬉しいようでもあり、
ただ、しばらくは今夜のことを忘れられそうにないだろう。
「どうした、とは…覚えていないのか?俺を庇ってお前は…」
「えっと…?」
「池田屋だ」
「いっ…いけ、い…けだや…!?」
口にした途端、まるで池田屋に行く前と変わらぬその反応は長く。
それからどうにか合点がいったようで、あっと声が漏れる。
「ああ、そっか行ったんだ!それで………ええと…」
「―――お前は俺を庇って藩士と対峙した、そして……」
「……はんし?」
また迷いだす記憶の糸を繋いでやっても、溜め息をひとつ。
どうやら本当に覚えていないようだった。
「とにかく、お前のお陰で俺は命拾いをした。―――ありがとう、春」
何故あんな馬鹿げた真似をしたのか、だとか叱りたい気持ちは山々。
それをぐっと抑えて、言いたいことはただ一つだけだ。
「…池田屋は、もう終わったんですか?」
「………ああ、終わった」
「そっか……よかった」
あれから。
当然、副長から春の素性について詰問を受けた。
目を覚ました今、
結局何も答えはわからない、けれど。
「……お前が無事で、良かった」
俺は、少なくとも。
その瞳に嘘がないと、近頃は思い始めたから。
休息の日は溜め息。
「でもー、流石に襲われたときはびっくりしましたよ?私」
「それは…っ」
「…なーんて。冗談ですよ、二日も寝てたんですもんね。…ご心配、お掛けしました」
いつの間にこうなった。
春の言葉に、俺が振り回されて、調子を狂わされて。
それも悪くはないと、思ってしまうのだ。