夢に見る
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「んー…」
「春…っ!?」
久しぶりに聞いた声に、俺は大きく跳ねた。
布団の中の身体は身じろぎ、安らかな寝顔の眉根がぐっと寄る。
「斎藤…さん、の…」
薄く開いた唇から、言葉は漏れる。
「けちぃー……」
夢に見る
「………全く………」
慌てた自分が恨めしい。
というか、何の寝言だ。
「…誰がケチだ」
一人呟いて、ぷに、とそっと頬をつまむ。
―――柔らかい。
「ふぇ…ごめんなひゃい…てばあ… 」
伸びる頬と寝言が面白くて、ついつい春の顔で一頻り遊んでから、はっと我に返る。
「……んー…?」
呑気にまた寝息をたてる春。
一昨日の夜の出来事こそ夢だったのではと、俺は戸惑う。
鬼神のような剣舞。
躊躇いのない切っ先。
散る、赤い色。
お前は何を思っている?
一体何者だ?
正直に心の中を語るのなら、
ふざけて笑うしょうもない奴、のままでいてくれたら。
否、そんなことよりも今は、
久しぶりに聞いた間抜けな声に安心感すら覚えてしまった。
あれから。
お前は眠ったまま。
「……ご馳走様」
食事も早々に済ませて、俺は春の部屋へ急いだ。
まだすやすやと眠り続ける身体が、布団を薄く膨らましている。
このまま目覚めなかったら寝覚めが悪い、
なんて。
それは建前。
野良猫が寄ってきたと自慢したり。
袴を踏んで躓いては、悔しそうに何故か怒ったり。
一人大声で歌を歌っては、俺に気づいて恥ずかしそうに誤魔化したり。
それが、最近は心地よくさえあって。
出来るならば目覚めて、
変わらず見ていたいと、思うのだ。