うららかなりせば
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「なんなのよ、これ…」
取り敢えず表紙を開く。
行書で美しく書かれたその文字は、読み取るのがやっとだ。
「えっと…『しれば、迷い…しらねば迷わぬ、恋の…』」
「春っ!!!!」
「わあああああっ!?」
いきなり後ろから抱き締められ、私は変な声を上げた。
「副長、何事で―――」
さ、
斎藤さん………!?
そう、私は土方さんに抱きつかれその姿を斎藤さんに見られているという何ともシュールな立場にいた。
「みっ…見たか!?」
「え?」
「…見ました」
答えたのは斎藤さんだ。
「いいか、絶対に口外するなよ…!?」
「は、はあ…」
「…副長…」
なんだか色々と間違ってる気がする。
斎藤さん、誤解です。
「あの、土方さん…?」
「なんだ!?」
「斎藤さんが誤解してます…」
彼はたぶん私の持っているこの帳を取りに来たのだ。
だが、よからぬポーズのせいでよからぬ誤解を斎藤さんにされている訳で。
お陰で私たちのご飯はすっかり遅れてしまった。
「よい、しょっと」
水の入った盥を持ち運んで、私は洗濯を始める。
隊士みんなの洗濯物となると、まるで大家族だ。
だが。
「…春、洗濯はしなくていいと言った筈だ」
これから巡察に向かうらしい斎藤さんが私に声を掛けてきた。
「私に出来ることは何でもすると言った筈です」
私も負けじと答える。
「もう一度言おう。洗濯だけはやらないでくれ」
それだけ言って斎藤さんは行ってしまう。
…なんだっての、この人は。
私は耳を貸さず洗濯を始める。
そこへ朝方私を陥れた張本人、沖田総司が通りかかった。
「あ、沖田さん!!」
私はさっきのは何なのかとか、色々聞きたいことがあったんだけど―――
「洗濯をしないでくれって?」
ちょっと驚いたように、沖田さんは聞き直した。
「はい。毎回言われるんですよ」
私が答えると、沖田さんは吟味するように俯いて。
「あっはははは、なるほどね。それ、気にしなくていいと思うよ」
一人で笑い始めた。
「…どういうことですか?」
「いや、そのまんま。例えばほら、今君が持ってるやつ」
沖田さんは面白そうに私の手元を指差す。
それは………
「…布、ですね」
そう答えると、またまたぶっと沖田さんは吹き出す。
「君がそう思ってるなら、そのままでいいってことだよ」
そしてまた何処かへぶらりと立ち去ってしまう。
…はあ?
「あ」
私は首を傾げる視界に平助君を見つけた。
「ねえ、平助君」
「ん?なんだ、春」
「この布って、なんなの?」
平助君は何故か赤くなり―――
彼もまた、私に洗濯をしなくていいと言った。
私がそれを褌だと知るのは、まだ少し先のこと。