Sweet Tragety
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「春ちゃん……っ春ちゃん!」
陰鬱な、空は涙のような雨を降らせていた。
それは苦しいほどに優しく、胸の音も掻き消してくれるように。
「春…ちゃ……」
どさりと跪いた、もう立っているのも覚束ない。
だから―――
「………沖田、さん……?」
夢でも見ているのかと、思った。
出会ったあの日と同じ、捨て猫みたいに膝を抱え震えながら蹲る彼女、びいどろのように透き通った目が。
ざあっ、と、雨が鳴る。
「春……ちゃん……?」
変色した視界に、ただ彼女だけが鮮やかで。
「春ちゃん…っ!!」
小さな身体を抱き締めると、彼女は笑った。
「……沖田さん、だ…」
冷えきった身体が強張ってから、そっと着物を掴む。
「………わたしの、勝ちです」
涙なら雨でわからない。
誰が落とした涙かもわからない。
「此処がわたしの、幸せな場所」
深く顔を埋めて、彼女は呟いた。
そう何だって知っている、
あなたがほんとうは不器用で仕方ないことも、
ほんとうは弱いところも、全部。
雨の中で抱き合って、彼女の言葉に溶けてしまいそうだった。
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