Sweet Tragety
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雨が降る、
しとしと。
雨が降る。
彼女はいない。
植木屋の片隅で横向きの紫陽花を見つめたまま、時間は過ぎた。
馬鹿の一つ覚えのように毎日見ていた、精進料理だとかいう不味い料理も運ばれてこなかった。
平静を装って食べる必要もない、
文句をつけて味見させて眺める表情すら、ない。
「………春、ちゃ……」
聞こえる筈も届けるつもりもない声が、無意識に口を突いて出た。
―――そう、わかっていたのだ。
彼女はいない。
酷い不安が押し寄せた。
望んだことなのに、手を伸ばしても彼女はいない。大声で名を呼んでも彼女はいない。
―――迎えに、行かなきゃ。
気がつけばふらつく足で立ち上がっていた、
五月、雨の日。
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