こんなに好きだから。
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「脇を締めろ」
がん、と大きな音が私の耳に谺して、激しい衝撃が再び私の両腕に襲い掛かった。
「力負けする、流せ」
「はいっ!」
容赦ない圧力と言葉に、言われるまま木刀を薙いで素早く横へ回り込む。
「そうだ」
斎藤さんの迷いない一振りが、確かにそれを受け止める。
そのとき―――
「どういう風の吹き回し?」
聞き慣れた声が私の耳許に届いた。
だが、
「沖田さ―――」
振り返るよりも、
速く。
ひゅん、と凡そ目視することもできない速さで、
私の横を銀色が掠めた。
「……一君」
背中を冷や汗が転げ落ちる。
「完全に殺る気だったでしょ」
それは―――今握っていた木刀ではなく、
真剣。
「春にあと一歩でも近付けばな」
「斎藤、さ………わっ!?」
私は握っていた木刀を引っ張られ、気づけば斎藤さんの腕の中にすっぽり収まっていた。
「総司、お前には二度と春に触れさせん」
「へえ…面白いじゃない」
もう……斎藤さんてば、あれからずっとこんな感じなんだから。
沖田さんも沖田さんだ。私のせいなんだから、そう言ってしまえばいいのに。
私は斎藤さんの体温で耳まで火照るのを感じながら、ぎゅっとその腕を握り返した。
『ごめんね』
沖田さんが口の形だけでそう告げて、不敵に笑うと去っていく。
「……もうお前から、一時も目が離せんな」
甘い声で囁かれて、私はくらりと目眩さえ覚えるほど―――
あなたに骨抜きになってしまった。
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