こんなに好きだから。
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「………ん」
暖かい何かが、私の身体を包んでいる。
未だ渦巻く視界、私は―――
「大馬鹿者が」
もしかしたら、死んじゃったのだろうか。
だって、
斎藤さんの声がする。
「さい、と…さ」
「何故、あんなことをした」
言い終える前に、思った以上に穏やかな声が私の言葉を遮った。
同時に、片手にひやり冷たい感触。
これはなんだろう、ええと。
「……斎藤さんの」
夢でも見てるんじゃないか、私。
だって、これは。
「お役に……立ちたかったから……」
口にした直後、私の身体は浮いた。
「馬鹿者……言った筈だ」
ねえ、覚えているよ、貴方が見せた真っ赤な頬と。
「俺の、傍を、離れるな…っ」
その、言葉。
そう、確か私は沖田さんと桝屋に討ち入りをして…
押し負けたんだ。
だけど、何故?
「っ…」
思い返す刹那、私の腕に鈍い痛みが押し寄せる。
「…すまない」
またふわりと身体から熱が遠ざかろうとする。
だが私はその熱に縋るように、確かめるように彼の身体を抱き締めた。
「斎藤、さっ…!」
「春…身体に障」
「いやです!」
私は駄々をこねるように頭を振った。
だって、生きている。
大好きな人が傍にいる。
ほう、と小さな溜め息が耳許で聞こえた。
「ごめんなさ…っ傍に、置いて下さい…っ!」
優しい手が、私の髪を撫でる。
「―――その言葉」
聞き慣れた、包むような声。
「偽りは―――ないだろうな?」
私は深く頷いて、そこでようやく身体を離してその人の目を見た。
冷たいようでいて、本当は私の全てを見て映してくれている、濃藍の瞳を。
「…ありません」
どうか届きますように。
私はありったけの真意を込めて、その瞳に映る私を見つめた。
「ならば…よい」
呟くような一言に、近付く唇。
「っん…」
私たちは深く口づけを交わした。
「……痛むか?」
唇が離れると同時に、傷口に甘い痛み。
それは―――斎藤さんの舌だった。
「っ…いえ…」
ぞくりと背筋が粟立ち、私はなんとか答える。
「……あの」
こんなときくらい、甘えても…いいよね。
「こっちが、いいです…」
私は俯いた斎藤さんの顔を上げ、唇を食んだ。
「……仕方のない奴だ」
「んっ…ふ…っ」
再び深い口づけ。
傷口の痛みなんて忘れてしまうほどに、私はその感覚に没頭した。
「どこか…痛むところは…ないか?」
口づけの合間に紡がれる言葉に、私は弛く首を振る。
幸せだ、こんなにも好きな人と、私は生きて一緒にいられる。
「お前の命、」
甘美な囁き。
「俺が貰い受けてもいいな?」
私は、
必死に頷いた。
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