キスミベイベ
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ああ、いい天気。
だというのにあいつのせいで苛々して仕方ない。
別に唇を奪われたとかそんな女々しい理由で頭に来たんじゃない。
大っ嫌いなあいつにキスされたというのが頭に来るのだ。
今日も今日とてあいつの授業は出ずに、私は天日を浴びていた。
場所は屋上。
勿論補習なんか出る気も全くない。
流石に昨日の今日で追い掛けても来ないだろう、最近は授業もちゃんと出てたし―――
と思って目蓋を閉じようとした、瞬間。
「百瀬ーっ!!」
馬鹿でかい声がそこら中に響き渡った。
「なっ…なんで来たのよ!?」
私も思わず驚きに大声を上げていた。
逃げるべく手をついて立とうとして、その手が先生の手にがっしりと掴まれる。
「や…離せ、ばかっ…!!」
「いーや離さねえよ!!お前がしっかり俺を見るまではな!!」
唇が震えた。
原田先生は飄々としている、こんなに声を荒げたところなんて初めて見た。
「なんっ…!?」
「お前、どうして俺の気持ちに気付かねえんだよ!?」
……は……?
「俺はお前に惚れちまってんのに、なんで見ねえふりすんだよ!?」
なにを言ってるの。
「他の女子なんか見てねえ、いつもお前のこと見てんのに―――なんで気付かねえんだよ!!」
「………っ」
私は自分の顔が弛んでいくのがわかった。
込み上げてきた涙のせいなのか、嬉しさのせいなのかはわからない。
「一個だけ…あんたの、好きなとこ、あるもんっ!!」
―――やだ、私。
なに言ってるんだろう。
「あんたの…笑ってくれるとこ、好きだけど…っ!!」
それは一時のことで、誰にでも笑って見せてる。
だから嫌いなんだ。
「じゃあなんでだよ!?」
「あんたが誰にでも優しいからでしょう!?」
私たちは馬鹿みたいに本気で怒鳴り合った。
そうして、ふっと力が抜ける。
「も…やだ…っ」
「……悪かった……」
涙が視界を覆って、きゅ、っと私の手に重ねた原田先生の手が握られる。
そして。
「……もうお前しか見えねえよ」
そ、っと耳元に降った甘い声に、私は肩を竦めた。
「…誰にでも、そんなこと…」
「言ってねえよ馬鹿」
そう言って不意に見せられた笑顔に―――
不覚ながら、私はときめいてしまった。
「…なあ、春?」
「なぁに先生。っていうか…先生サボっていいワケ?」
「お前のこと気になって授業どころじゃねえよ」
「…せんせ?」
「なんだ?」
「私が合格したら何かご褒美ちょうだい?」
「いいぞ。合格したら…キスしてくれ、お前から」
「…なにそれ」
「いいだろ?」
こんなに待ったんだからよ。
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