キスミベイベ
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それは補習も残すところあと一日となった日の出来事だった。
「…なあ、百瀬」
不意に教科書を覗き込むのをやめて、原田先生は言った。
「なんですか?」
「お前、なんで俺のこと嫌いなんだ?」
ぶっと吹き出しそうになった。
まさかこんな真面目くさって聞かれると思わなかったから。
「あ、いや…いっぱいありすぎて挙げられません、ぶふっ」
思わず笑いながら答えると、原田先生はその綺麗な顔を歪める。
「……そんなにあんのかよ?」
「はい、まあ敢えて挙げてみましょうか?」
「……なんか気が進まねえが…言ってみろ」
気が進まないなら聞かなければよかろうに。
おかしな人だ。
「そのチャラチャラしたとことかダルそうなとことか先生らしからぬ態度とか聞く耳持たないとこと」
「わかった、もういい」
…まだ序盤なのに軟弱である。
私は唇を尖らせるとまたノートに目を落とした。
そして、また。
「………なあ、百瀬」
「……なんなんですか」
私は多少苛々しながら顔を上げた―――
そのとき。
むにっ、と唇が塞がれた。
「っ…なにす…っ!」
私は慌てて唇を拭った。
その様子を困ったような顔が見下ろす、
刹那。
がたんっと小さく金属の擦れる音がして、続いて―――駆けていく足音が私の耳に届いた。
「……っ!」
一瞬で理解した。
こいつ、告白しに来た子を追っ払うために私とキスしてるとこを見せつけたんだ。
かあっと頭に血が上った。
最っ低。
もう言葉にすらならなくて、私は教科書もノートもそのままに鞄だけひっつかんで教室を飛び出していた。
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