君の隣で。
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「…じゃあ」
とにかく、こんなに距離を離して正座しあっていてもどちらも休めない。
「膝枕、して下さい」
春ははにかみながら言った。
「なっ…」
斎藤が狼狽える。
まさかこんな頼み事をされるとは思っていなかったのだろう。
だが春も不満げな眼差しを斎藤に向けた。
「ダメなんですか?」
―――じっと見られると、どうしても断れない。
「……勝手にしろ」
そう言うと、きゅっと唇を引き結んで正座を正す。
なんでそんなに畏まっているのか、と内心苦笑しながら、春は「では」と短く告げてその膝に頭を乗せた。
「っ…」
斎藤が軽く身じろぎする。
見上げると彼の頬は真っ赤に染まっていた。
「…斎藤さん、風邪ですか?」
「ち、違うっ!」
ふうん、と答えて春は寝返りを打った。
―――斎藤さんの匂いがする。
骨張った膝は決して寝心地の良いものではなかったが、その匂いに安心して春は目を閉じた。
すると―――
微かな衣擦れの音がして、大きな手が春の髪を掬った。
黙っていると、そのまま頭を優しく撫でられて何とも言えない心地よさを覚える。
「………」
横顔に痛いほどの視線を感じる。
何を思っているのだろうか、と眠れずに考えていると。
ふわ、と頬に移動した手に、思わず鳥肌が立った。
そしてその手が唇に伸びて―――
「狸寝入りをするな、春」
「……はい…」
どうやら斎藤には見透かされていたらしい。
唇に残る優しい感触を思いながら、春は今度こそ眠りに落ちた。
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