君の隣で。
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「すみません…」
鬼気迫る目の前のひとに、春はただ謝ることしかできなかった。
君の隣で。
夕方の巡察中、浪士に出くわして戦闘になってしまったという報を聞き、斎藤は救急箱を持って駆け出していた。
なんとか成敗したものの、春は鍔競り合いで負けたときに右腕に結構な怪我を負わされてしまったということだった。
「…謝ってほしいわけじゃない」
まだ怒りの沸々と見て取れる声音で斎藤は言いながら、慣れない手つきで包帯を巻く。
「じゃあ、どうすれば…」
彼の機嫌は直るのだろうか。
負ってしまったものは仕方ないし、謝る以外に彼の機嫌を直す方法は見つからない。
すると彼は呆れたように、諦めたように嘆息して言った。
「…もう無茶をしないと約束しろ」
「相手が不逞を働いても?」
「働いても、だ」
む、と春は頬を膨らませる。
そこに不逞浪士がいても見逃せというのか、と目が語る。
「……とにかく、俺を呼べ」
そんな思いに気づいたのか、また彼は呆れたように言った。
やがて観念した春が渋々頷くと、斎藤はようやくふっと顔を弛ませて見せた。
「今日は俺が看ていてやる。ゆっくり休め」
「ほ…本当ですか!?」
春は思わず身を乗り出して言った。
このひとと、一日ゆっくり出来るなんて、なんという贅沢だろうか。
「なにをニヤニヤしている」
「…にこにこって言ってくれません?」
そんな言い合いをするが、やはり嬉しい。
「ほんとに、今日はずっと一緒にいて下さいね」
「ああ、約束しよう」
その答えに春は嬉しそうに満面の笑みを見せた。
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