乳白色に紛れ
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「った~~…」
鼻を派手にぶつけてしまった、わたしは情けない声を上げる。
そして、とすんっと鳴った前方を恐る恐る見ると。
「あ…」
斎藤さんが座った格好で、私を見下ろしていた。
怒られるかと思ったが、ふっと笑われて私の胸は大きく高鳴る。
「すみません…」
「……いや、いい」
私が謝ると、斎藤さんは何を思ったかそのまま仰向けに雪の上に寝転んだ。
何を、と言う私に、「俺の不注意だからお前だけ転がしておくわけにいくまい」と変な理屈を言うものだから、思わず吹き出してしまう。
―――雪に転がったのなんて、何年ぶりだろうか。
童の頃に戻ったような気がして、私はしばらくそうしていたいと思った。
「……斎藤さん」
雪の上に掛かった彼の長い髪に手を触れてみる。
彼の長い髪が、私は好きだ。
「…なんだ」
深い藍色のような瞳にじっと見つめられて、私はどうしたものかと視線をさ迷わせた。
「斎藤さんって、」
雪みたいです。
綺麗で、儚くて、触ったら溶けちゃいそうで。
流石にそれを口にするのは躊躇われて、私は言葉を濁す。
しんしん、冷たい雪が私たちの上に積もっては消える。
斎藤さんは、消えないで下さいね、なんて言えなくて。
私は「なんでもありません」と言って、彼の手が溶けないことを確かめるように強く握った。
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