コイビトツナギ
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翌日。
休み時間になって、「それ」に気づいた私の足は思わず竦んでいた。
昨日の女の子と沖田が、楽しそうに話していた。
それだけじゃない、ほっぺを軽くつねる振りをしたり。
いつもは毎回のように私のところに来る沖田は、今日は私なんか見えてもいないみたいだった。
―――私には思いっきりつねるくせに。
シュシュを握ったまま、私は言い様のない不快感が襲ってきて席に戻ると、黙ってノートを開く。
友達がすかさず寄ってきてくれるし、別に何ともない。
だけど、なんだか気持ち悪くて仕方なかった。
放課後になると、沖田は彼女たちに挨拶をしてから私の席に来た。
いつもと何も変わらず、私はテスト勉強に集中して、沖田がそれを邪魔して。
いや別に沖田が誰と付き合おうと関係ないし、あの子と仲良くなったんだ、みたいな嫌味を言う気だって本当に起きない。
だから私たちは、一見いつも通り、だった。
「…あ、沖田これ」
私はふと思い出して、返していなかったシュシュを手渡した。
だけど。
沖田の手に、無意識に触れないようにしていたかも知れない。
「ああ、忘れてた。…じゃ、今日はどんな風にしようかな」
沖田が悪戯っぽく笑って私の髪に手を伸ばしてきたとき、それは明白になった。
ぱしん、と小さな音が響いた。
自分が何をしたのか、だんだんとはっきりしてくる。
けれど、ごめんだとか謝る言葉は頭に浮かびもしなかった。
「…さわらないで」
言葉が独りでに口を突く。
でも悪いだなんてちっとも思えない、とにかく気分が悪かった。
沖田は驚くでもなく私をじっと見つめ、微笑さえ浮かべて「わかった」と答えた。
―――それからは、あまりよく覚えていない。
無駄口を叩きながら時間を潰して、一君が迎えに来て、沖田は帰っていった。
次の日もその次の日も、沖田は沖田のままだった。
あの日のことなんか無かったことのように、いつも通りだった、けれど無かったことではない証拠に、沖田は私に指一本触れなかった。本当に、指一本でさえも。
いつか確信した『友達以上』から、私たちはただの『友達』になった。
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