コイビトツナギ
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『ねえ、沖田』
『ん?』
『もう、離して』
『だーめ。』
コイビトツナギ
「沖田君と春ちゃんてさ……付き合ってるの?」
彼女は聞いた。
「そうだよ」
「無いから」
私たちは各々即答した。
そしてお互い睨み合う。いや、睨んでいるのは私だけで、沖田は笑顔を向けてくる。
「……ウソ言わないでよ、沖田」
「あれ?違ったの?」
「違うでしょーが」
なんで私がこんな奴のことを好きになるのか。
それよりも私は今目の前のテスト勉強に必死なのだ。
シャープペンを走らせる私……の、後ろに椅子を持ってきて座っている沖田が、私の髪を弄くりまわしている。
「っあーもう!ワケわかんないよ数学!!」
悶絶する私の後ろで、沖田が「でーきた」等と能天気な声を上げた。
「ちょっ…何してんの沖田!」
「んー?お団子作ったよ」
「作るな!!今すぐ解いて」
「えー?せっかく上手にできたんだから」
やだ、と言いながらまだ弄くるのをやめない沖田。
サボってばっかで勉強しないこいつの成績が私より良いなんて不公平だ。
沖田と付き合うなんて有り得ないでしょ、私は頭もお留守にぼんやり思う。
空がきれいだったから授業をサボって屋上に避難した私が出会ったのが、こいつだった。
同じクラスの、沖田総司。
君みたいな子がサボるって珍しいね、と言われたから理由を言ったら爆笑されて、それ以来よく一緒に居るようになった。
それだけだ。
こういうの何て言うんだろう、友達というのはよそよそしいけれど、恋人では決してない。
つまり、単なる『友達以上』だ。
それが何やら2年の冬ともなると、皆して付き合うだの云々と言っているけど、私たちは断じてそんなんじゃない。
と、そのとき。
「わあ、沖田くんって器用なんだねぇー!」
「うんうん、百瀬さん羨ましいー」
「わたしもやってもらいたいなぁー」
―――来た。
黄色い声に貴重な勉強時間を削られるのを防ぐべく、私はノートとにらめっこしたまま沖田に「沖田、行ってらっしゃい」とだけ告げる。
「ああ、ごめんね。友達もうすぐ来るから」
ええーっ、残念、と女の子たちは悲鳴を上げて、「また今度ね」なんて勝手に約束して去っていく。
恋より友を取ったか、沖田。
何にせよ追っ払ってくれて感謝だ、呼び寄せたのは沖田だけど。
それに、友達が来るっていうのは嘘じゃない。
沖田の言った通り、入れ替わるように、彼は私たちの席にやって来た。
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