はじめくん、がんばる。
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翌朝。
「左之さん、味噌が少ないですっ!新八さんはそんなに火ー強くしないで下さい!」
うっかり組の食事当番に当たった春は、いつもの通り凛として魚を焼いていた。
「おうおう、春ちゃんは良い嫁になるなあ」
原田は永倉の言った嫁という言葉にどきりとして春を盗み見る。
が。
「よしっ、新八さんお皿!」
「って、無視かいっ!」
………普段と、何ら変わらない。
昨日は夜も遅かったからだろうか、斎藤は昨夜あれから何かしらしたとは考え難い。
菜の乗った盆を手に意気揚々と廊下を往く春の背に溜め息を吐く。
後を追えば予想通り、広間の前で春は立ち止まった。
思い盆で両手が塞がっていて、戸が開けられないのだ。
時折こんな小さな失敗をするのは彼女の愛嬌だと思いながら、原田は後ろからそっと襖を開けてやる。
「…ほらよ」
「あっ、左之さん!ありがとうございます!」
そこへ。
「わっ!?」
「朝からいちゃつかないでくれるかなあ、僕の春ちゃんと」
「……沖田さん、邪魔です……」
横合いから手を伸ばしてきたのは沖田だった。
―――成る程、斎藤は敵が多い。
だがこんなことはそれこそ日常茶飯事で、斎藤がそれを理由に焦って何かしたという訳ではないらしい。
「では…頂きます!」
近藤の掛け声で、その日の朝食も始まった。
暫くの間、和気藹々と食事は進んでいく。
それを壊したのは――――斎藤の一言だった。
「春」
ぴたり、と皆の声が一瞬にして止み―――
声の主を見る。
斎藤は何やら思案顔で箸を止め、
言った。
「…お前の味噌汁が、好きだ」
ぶふぉっ
斎藤と春を除く全員が、一斉に吹き出す音が響いた。
「…そのお味噌汁は、原田さんに頼んで下さい」
突然の赤面ものの言葉に、春はしれっと答えた。
どこか棘があるのは、やはり昨日のあの騒ぎが解決していない証だろう。
皆は二人の動向をじっと見守っているが、二人―――否、少なくとも斎藤は完全にそんなものは目に入っていない様子だ。
「ならば、お前の魚が好きだ」
「それはお魚が美味しいだけで私は関係ありません…」
―――なんと不憫な奴だ、斎藤。
皆の目がそう言いながら、その文章から一言抜かれるのを今か今かと待っていた。
「ならば…」
戸惑うように、斎藤は視線を泳がせる。
「何が好きだと言えばいいのだ…?」
唖然。
まさしくその表現はこの時のためにあったとさえ思うほど、全員が、沖田すらも唖然としていた。
見る見る内に春の表情が強ばり、すう、っと息を吸い込んだ―――
刹那。
「…斎藤」
やっと口を開いたのは、鬼の副長だった。
「お前…ちっとこの後…俺の処へ来い…」