はじめくん、がんばる。
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―――よし。
深く息を整えて、斎藤は襖の前に立った。
「左之、居るか」
斎藤が訪れたのは、
原田の部屋だった。
「んあ?なんか用か?」
予想外だったのだろう、同じく斎藤とて予想外の訪問をしていると思う。
「あんたに折り入って聞きたいことがある」
びっくりとしていた原田の顔は、みるみる内に兄のような笑顔に変わった。
実際、最年少の斎藤は彼にとって弟のようにも見えるのだろう。
「おう、入れ入れ」
促され座れば、原田はぬるま酒を取り出して斎藤に盃を渡す。
失礼する、と告げて、斎藤は一口に酒をあおると切り出した。
「……女子の考えていることはどうやって知ればいい?」
ぶふぉっ、と盛大に、原田は吹いた。
「…どうしたのだ?」
ぽけーっと問う斎藤こそどうしたものか。
昼間の春の心情を察しながら、原田は慌てて口許を拭った。
「あ、あー…すまん。で、女の気持ちが知りたい、とな?」
「そうだ。左之ならわかると思い訊きに来た」
「あ~…だが俺のは宛てにならねえと思うぞ?」
「何故だ」
淡々と問う斎藤は、何とも勿体無い奴だ、と原田は内心思った。
そこそこ顔は整っているのだから、もう少しばかり融通の利く頭なら言うこと無しなのだが。
「いや、俺の場合体に聞いちまうからよ」
原田はそう答えた。
「体に…拷問を、するのか?」
――――どうしてそうなるのだ。
ぶふっ、と二度目の酒を吹きながら、原田はこの堅物をどうすべきか困惑する。
「違えよ!お前間違っても女に拷問なんぞするなよ!」
「…?わかった」
果たしてわかっているのかいないのか。
兎にも角にも、春に拷問などされては堪ったものではない。
「あ~…いいか、女ってのは目を見りゃ何考えてるかなんぞ一発でわかる」
「…目を合わせられなかったら、どうする」
つまり、合わせられないのか。
原田は心底呆れる。これほど分かりやすい二人など転がっていないような気がするというのに。
「…んなら、言葉だな」
「言葉…」
「ああ。伝えなけりゃわかんねえこともあるからな」
「成る程。―――いや、待て」
急に表情を曇らせた斎藤を見て、原田はしまった、と閉口した。
昼間の沙汰で「鈍感」だの「むっつり助兵衛」だの言われていた斎藤は、つまり、そういう風に思われていることになる。
―――敵に塩を送るか、と観念し、原田は溜め息を吐いた。
「……相手の言葉じゃねえだろ、自分の言葉だ」
斎藤ははっと顔を上げた。
これほどの妙案を、といった顔だ。
「わかった…助かった」
あまりの感動なのか頬を紅潮させ、斎藤は早速原田の部屋を後にした。