桜舞う日と君を待つ。
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「沖田さんっ」
僕の名前を呼び、愛しいひとは駆け寄ってきた。
少し待ちくたびれて縁側で寝転んでいた僕の隣に、春が腰掛ける。
「それ、なに?」
彼女の両手に大事そうに抱えているものを指差すと、彼女は嬉しそうに口許を綻ばす。
「桜餅です」
「ああ…」
そんなことを覚えてたのか。
「ありがとう」
彼女はくすぐったそうな笑顔で応えると、包みを解く手を止める。
「今、お茶を淹れてきますね」
僕は反射的に、立ち上がろうとする彼女の手を掴んで引き留めた。
「いらない。行かないでよ」
彼女は驚いて目を丸くすると、困ったように笑って座り直した。
柔らかい日差しと、そして桜の花びらがひらひらと舞い散り降り注ぐ。
僕はふとあの日を思い出して、身体を起こすと春の後ろに座って髪の結い紐を解いた。
「……沖田さん?」
仄かに香る長い髪を手に取る。
「…沖田さんが意地悪をする理由、答えてもいいですか?」
「うん。どうぞ」
彼女の髪を弄りながら、僕は答えた。
「………わたしが、沖田さんを好きだから、です」
―――手が、止まってしまった。
そして思わず、僕は吹き出す。
「あははは…なに、それ。変わった告白かな」
耳まで赤くした春は、「違うんですか」だなんて生真面目に言っている。
「まあ、半分、正解なのかな」
それは、たったひとつ、僕にはわからないことだ。
正解だと言えたら嬉しいけれど。
「―――さて、出来た」
僕は大切なそれを懐から取り出すと、春の髪に挿してやった。
妙な感触でもしたのだろう、春は自分の髪に触れて、それを探り当てた。
「…沖田さん、これ…!?」
振り返った春を、僕は思いきり抱き締めた。
「正解はね」
君が。
僕が、君のことを、好きだからだよ。
あの日待ち焦がれた季節と君が、永遠にありますように。