ハジメノヒ。
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「―――なんだ、これは」
大きな重箱を開けて、思わず声が出た。
「ほう…お節料理か!!」
「すっげー…こんなん小せえ頃以来だぜ!!」
「おおっ、旨そうー!!近藤さん、早く音頭取ってくれ!」
「うむ!!皆、新年おめでとう、頂きます!!」
「頂きまーす」
いつもより声が近いのは、皆で広げた重を囲って座っているからだ。
家族のようだ、と近藤が感慨深げに呟く。
だが斎藤は、隣に座るたすき掛けをしたままの春をちらりと見ずにはいられなかった。
「…それで、寝ていないのか」
言うと春は悪戯の見つかった子供のように苦笑して俯く。
「手際が、よくないので…」
と言ってもわたしが作ったのは煮豆や鯰やお煮しめくらいですよ、と彼女は何処か嬉しそうに呟いた。確かに屯所の勝手場では伊達巻きや昆布巻きを作れるものでもない。
どちらにせよ、見目もよく味もよいのは確かだった。
「……ああ、美味いな」
まさか屯所でこのような穏やかな元日を迎えるとは思わなかった斎藤は、少し頬を弛めた。
と、斎藤さん、と呼ばれ。
「あの、おめでとうございます」
「…ああ、おめでとう、?」
不意に革まった物言いで、彼女は言う。
何故そのように改めて新年の挨拶をするのか不思議に思い、斎藤は困惑した。
だが、それを遮るように。
「春ちゃん、俺雑煮が食いてえなー」
「お前は晦日からそればっかりだな…でも俺も食いたい」
はい、只今とすぐに答え、春は席を立ってしまった。
「誰かさんたちは人使いが粗いなあ…昼間まで寝てたお詫びに、自分でよそったら?」
沖田が再びずばり毒づき、永倉や原田は慌ててその後を追っていく。
あとに残された斎藤は、やはり彼女の意図していることがわからずに思案していた。
すると。
呆れたように土方が口を開く。
「斎藤、お前は今日は『ありがとう』の日だ」
「……意味が、わかりません」
斎藤が答えると、お手上げだ、というようにようやく土方は核心に触れた。
「…お前の生まれた日だって、彼女が喜んでんだぞ」
はた、と手が止まった。
「……まさか、それで」
「これしか思いつかないんだ、と」
「…なぁんだ、愛されてるね一君」
沖田が不貞腐れるように吐く。
全て合点がいった、先日の話の意図や昨晩のこと、先ほどの『おめでとう』の意味。
「………少し、席を外します」
斎藤は言うと、総司俺の分の飯は絶対に残しておけ、と付け足してから、彼女の元へと急いだ。