ハジメノヒ。
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―――柄にもなく、随分と呑みすぎてしまったらしい。
寝に落ちる間際の記憶がない。
気が付くと薄い布団の上に横たわっていて、板の間に寝転んでいたら身体はこうも楽ではなかったに違いない。
おまけに掛け布団まで掛かっており、それ故寒くて目覚めることもなかったのだろう。
「う…ん」
身体をやや起こすと、そこら中に幹部の連中が転がっている。
「…っ!?」
ふと視点をさ迷わせた斎藤は、驚きで声を上げそうになった。
「お早う御座います、斎藤さん」
そこには春が居たのだ。
「…俺は…」
「お水、どうぞ」
「む」
乾いた口に、冷や水が染み渡る。
そうか、昨夜は。
蕎麦を食い酒を浴びるほど呑んで、酒豪と言われる斎藤も他の幹部連中が潰れた後で眠ってしまったのだ。
「おめでとうございます」
新年早々、恥ずべき姿を見せてしまった。
斎藤は空になった湯呑みを受け取り挨拶をする春から目を逸らしつつ、「ああ」と実に滑稽な返事をした。
くす、と春が笑う。
と、
「んあー…」
隣で目覚めたらしい藤堂が、大欠伸をして起き上がった。
「……うまそう…」
まだ半分夢見心地なのか、虚ろな目でそれだけ呟く。
春は生真面目に、またお早うございますと言った。
「ご飯にしますか?」
「…うおっ、おはよう!?」
素頓狂な声を出したのは、春が居るとは思っていなかったからだろう。
「おう、平助、いつまで寝てるかと思ったぜ」
土方はどうやら少し前から広間に居たらしい、苦笑しながら声を掛ける。
「早くそこのお馬鹿兄弟を起こしてくれるかな、僕お腹空いてるんだけど」
沖田もあまり呑まず部屋で寝ていたようだ、卓の前に座って毒づく。
「ひっでえなー…おい新八っつぁん、左之さん、朝だぞ!!」
「もうお昼だけど」
「マジで!?道理で腹が減ったワケだ…おい、新八っつぁん!!」
「ううーん…」
ふああ、と原田は眠たげな顔で起き上がり、永倉はなかなか起きない。
「あ、てゆーか、今日の食事当番って…」
「…あ」
原田はその一言で目がすっかり覚めたようだった。
今日の食事当番は原田と永倉だ。
「おいおい…元日にゃ店も閉まっちまってるよ左之さん…」
がっくりと肩を落とす藤堂に、呆れたように土方が助け船を出した。
「安心しろ、今日は春が代わりに作ってくれてある」
心無しか、また斎藤の胸はなんだか荒ぶ。
土方と春が親しげにしていることを、羨む権利など無いというのに。
「と、とにかくわたしは膳を準備しますので…永倉さんをお願いします!」
そう言うと、春はそそくさと立ち上がった。
「春、俺も手伝―――」
「今日は斎藤さんはだめです!!」
言い終える前に、春はぴしゃりと言って捨てた。
何事なのか、と思い彼女の顔を見上げると、どうやら怒ってはいないようだ。
「待ってて下さい」
笑って言う目許が、何処と無く赤いように見えた。