ハジメノヒ。
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「…晦日だと言うのにおちおち蕎麦も食えん」
大晦日の夕刻、底冷えをする寒さだというにも関わらず、斎藤は縁側に座って言った。
夕飯だと呼びに来た沖田はにやにやと笑う。
「春ちゃんがそんなに気になるなら、お役目買って出ればよかったのに」
「そ…そんなことは言っていない!」
ふーん?、と沖田に笑われ、居心地が更に悪くなる。
「とにかく、御飯なんだから早く行こうよ?春ちゃんは土方さんがついてるから安全でしょう?」
む、と斎藤は口をつぐんでやや考え、やがて立ち上がる。
春のいない食卓の、なんと味気無いことか。
せっかく春が作り置きしておいてくれた出汁も、本人がいないことには褒めようもない。
斎藤は始終黙って蕎麦を啜り、気も漫ろで幹部と共に酒をあおることになってしまった。
「ただいま帰りましたっ!!」
ぎゃははは、と大騒ぎをする藤堂や原田、永倉の声に混じってその声が聞こえてきたのは、大分夜も更けた頃だった。
「春っ…無事だったか…」
「…?はい、土方さんがついていて下さいましたので」
わたしは無事ですよ、という笑顔にこの時ばかりはなんだか心が痛む。
「しかし、さぞ冷えただろう」
触れたい気持ちを押し止めて、春の赤くなった手を見下ろす。
「いえ、あ、土方さん!すぐにお蕎麦を茹でて来ます!」
「おう、頼む」
「副長、蕎麦なら俺が温めて―――」
「だめです!!」
驚くような剣幕で、春は反対した。
やれやれ、といった様に口の端を引いて微笑む土方と、その、と視線を泳がせる春。
二人の間に、何か通ずるものがあるように思えて。
「斎藤、こいつはお前らに休んでもらいたいんだとよ。酒でも呑んでろ」
なんだか自分は蚊帳の外のような気分で、斎藤は平静を保ち、わかりました、と答えるだけで精一杯だった。