悪戯
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「―――それで」
やや身構えたまま、春は杯に酒を注ぐ。
事情を知る揚屋の計らいで禿も他の芸妓も居らず、艶やかな部屋の中で二人きりというのは意に反して緊張する。
しかし次の言葉を発する前に、沖田は春の手からお銚子を取り上げた。
「な…」
「いいから」
沖田は手近な杯の皿からもう一つ、杯を取るとそれを春の手に押し付けた。
そして有無を言わせずお銚子を傾ける。
「呑もうよ、春ちゃんも」
―――何を考えてるんだ、こいつは。
言いたげな顔を満足げに眺めると、沖田は不意に片膝を立て姿勢を崩した。
そんな何気ない動作にも、普段と違い彼女はぴくっと反応を返す。
―――気に喰わない。
「ですが、私は…っ」
知っている。
彼女は酒は嗜まないし、呑めない。
「呑まないなら」
沖田は一度置いた杯を右手に取る。
そして左腕で、ぐっと春の肩を抱き寄せた。
改めて、力の差を感じる。
春は自分の身も守れないほど弱くはない、が、単に男と女となればとても小さくか弱いものだと。
「…呑ませてあげようか?」
吐息も掛かる距離で言われ、春が薄暗い中で頬を染めるのがわかった。
―――また、胸がちくりとする。
「……頂きます」
しばらく上目遣いで沖田を睨んでいた春は、そう言って観念したように杯を口元に運んだ。
沖田も同時に酒をあおる。
「う…けほっ」
春が噎せるが、沖田は更にお銚子を傾けた。
「ちょっ…!」
「なあに?やっぱり口移しがいい?」
「………」
彼女は当惑しきり、それからはぁ、と諦めたように一つ嘆息して、また小さく喉を鳴らした。