悪戯
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すっ、と静かに襖が開き、揃った小さな両手に白い首筋が見えた。
簪が揺れる。
「お今晩は、よくお出で下さいました。旦那様のお相手をさせて頂きます、春に御座います」
深々と頭を垂れ、そして彼女はゆっくりと顔を上げ―――
「こんばんは、春ちゃん」
「………沖田さん」
目の前にいる人物を認識するや否や、途端に露骨に顔をしかめた。
「人の顔見てその反応は傷付くなあ」
「………なんの真似ですか」
傷付いてなんかいないくせに。
春は胡散臭そうな視線を沖田に向ける。
春は謂わば密偵として、島原で薩摩や長州の藩士から情報を探っている。
連絡すべきことが有れば、頻繁に顔を見せに来る山崎辺りに伝えることになっているのだ。
沖田のような幹部が、それも一人でわざわざ何の用があって来たというのか―――
しかし沖田はそれをにっこり笑って受け流した。
「今人気の春ちゃんっていう娘に会いたいな、と思って」
「…は?」
大きな目を瞬いて、春は尚も訝しげに眉根を寄せる。
「僕は今日は単なるお客さんなんだけど?」
沖田は杯を片手で弄んで言う。
「京女じゃないけど一生懸命で素直で可愛らしくって身請けしたいって言い寄られてるって噂の女の子のお酌を楽しみにしてたんだけど」
沖田は棘のある口調で言って見せた。
確かにそんな風に噂されているし、言い寄られているのも事実だ。
だが―――それの何が沖田の言動に繋がるのか苛立ちの素になっているのか、全くわからない。
「それとも何?君は僕のお酌をしちゃいけないって命令でもあるのかな?」
しばらく視線を絡め合った後―――
春は沖田の腹の内を探るのを諦めて、彼の隣に座りお銚子を手にした。