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拍手御礼!!
「先輩」
背後から聞こえた声に私はぎくりと固まり、そして自分の運のなさを恨んだ。
「もしかして届かないんですか?」
SCL◆沖田総司◆雨降る夜の秘め事
「届きます」
私は平常心を貫くことを決め込み、そう答えた。
「へえ」
だからあっちに行って、とは流石に言えずに、わ私はそびえ立つロッカーを睨む。
なんだって、私がよりにもよって一番上だというのだろうか。
いや学籍番号順なんだけど、だからと言って少しは憂慮してくれてもいいと思うのだ。
だって私は、小さいんだもん。
更にどうしてこのタイミングで現れるのか、沖田総司の痛いほどの視線を背中いっぱいに浴びているとはなんと言う運のなさだろう。
沖田は一つ下の後輩。
大学では先輩後輩なんて呼ぶのはサークルくらいだけど、沖田は高校も同じだったから相変わらず私のことを先輩と呼び続けている。
それは置いておいて、私はロッカーの中身を取り出さなきゃいけないんだ。
何故なら外は急な雨、いまだに置き傘というスタンスを貫いている私はここぞとばかりにロッカーに折り畳み傘を取りに来たのだけど―――そう、どうせ使わないだろうと思って上のほうにえいっと押し込んだのが悪かった、もう指先も届かない。
はあ、と溜め息を吐いて、私は不様なのも承知でつま先立ちをするとぐっと手を伸ばした。
が、傘らしきものは指先に触れない。
「だから、素直にお願いしたらどうですか?」
後ろで沖田が口を挟んだ。
―――誰があんたにお願いするかっての。変な因縁をつけられたら先が思いやられるのだ。
「結構です」
私は答えると背伸びの作業を続けた。
今日は皆の嫌う6限までか講義があったから外は真っ暗だし、ロッカールームは人気がないに等しかった。
「ふうん?」
透かした返事をする沖田は、彼もまた同じ授業だったからこの時間までいるわけで、のこのこと私について此処までやって来た。たぶん馬鹿にするのが目的ではないかと思う、こいつはそういう奴だ。
ぴょんっと跳ね上がってみるも、無惨。
「先輩、パンツ見えるよ」
沖田にさらっと言われ、為す術なくなってしまう。
「………」
悔しい。
が、どうしようもない。
「あれ、どこ行くんですか先輩」
「帰るんです」
私は諦めると踵を返して、雨の中を歩いて帰ることに決めた。
この時間では購買も閉まっている、仕方がない。
―――と。
「…素直じゃないなあ」
不意に手が掴まれた―――と思うと、振り返った私の目には、片手で悠々と私のロッカーから傘を取り出す沖田の姿が映った。
「…頼んでません」
「いいよ、僕が勝手にやったことだから」
彼は呆れたように笑った。
「その代わり、僕も入れてくれるかな」
傘忘れちゃったんだよね、と飄々と言ってのける彼に、私はしばらく悩みに悩んで、そして頷いた。
沖田と帰るのは、当然初めてだった。
「雨もたまにはいいよね」
何が「いいよね」だ。
全然よくない。
だけど私は気付いていた、沖田が私に合わせて歩幅を小さくしてくれていること。
他の人とでは私が小走りするなんてこと、いっぱいあるのに。
おまけに傘まで持ってくれて、でも折り畳み傘は小さいから、私の方に傾けてくれているのにも気付いていた。
―――こいつ、意地悪なんだか優しいんだかわからない。
「……ありがとう」
私は聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう呟いた。
ちらりと横、正しくは斜め上を見遣るが、沖田は涼しい顔で歩いている。
「………あのさ、先輩」
唐突に、沖田は切り出した。
「こわいから、手握ってもいいかな」
……こわい?
また何かからかっているのかと思って沖田を見上げるが、彼は私の返事を待つように目を細めて見返すだけで。
「―――なにが」
どきん、と私の胸が鳴った。
沖田は綺麗な目で私を見る、いつだって。
「先輩、小さいから気付かないうちにどっか行っちゃいそうで」
また、どきっと胸が鳴る。
どうしちゃったの、私も沖田も。
そんな真っ直ぐな目で言われたら、私。
「……いい、よ」
断れない。
沖田の手が、そっと私の手を包んだ。
大きくて、温かい手。
「先輩」
沖田がきゅっと指の間を握って言った言葉に、
私は頷いた。
「好きだよ」
*end
拍手有り難うございます。
リクや感想など、宜しければお送り下さいませ。
あなたの一言で頑張れます。
拍手御礼!!
「先輩」
背後から聞こえた声に私はぎくりと固まり、そして自分の運のなさを恨んだ。
「もしかして届かないんですか?」
SCL◆沖田総司◆雨降る夜の秘め事
「届きます」
私は平常心を貫くことを決め込み、そう答えた。
「へえ」
だからあっちに行って、とは流石に言えずに、わ私はそびえ立つロッカーを睨む。
なんだって、私がよりにもよって一番上だというのだろうか。
いや学籍番号順なんだけど、だからと言って少しは憂慮してくれてもいいと思うのだ。
だって私は、小さいんだもん。
更にどうしてこのタイミングで現れるのか、沖田総司の痛いほどの視線を背中いっぱいに浴びているとはなんと言う運のなさだろう。
沖田は一つ下の後輩。
大学では先輩後輩なんて呼ぶのはサークルくらいだけど、沖田は高校も同じだったから相変わらず私のことを先輩と呼び続けている。
それは置いておいて、私はロッカーの中身を取り出さなきゃいけないんだ。
何故なら外は急な雨、いまだに置き傘というスタンスを貫いている私はここぞとばかりにロッカーに折り畳み傘を取りに来たのだけど―――そう、どうせ使わないだろうと思って上のほうにえいっと押し込んだのが悪かった、もう指先も届かない。
はあ、と溜め息を吐いて、私は不様なのも承知でつま先立ちをするとぐっと手を伸ばした。
が、傘らしきものは指先に触れない。
「だから、素直にお願いしたらどうですか?」
後ろで沖田が口を挟んだ。
―――誰があんたにお願いするかっての。変な因縁をつけられたら先が思いやられるのだ。
「結構です」
私は答えると背伸びの作業を続けた。
今日は皆の嫌う6限までか講義があったから外は真っ暗だし、ロッカールームは人気がないに等しかった。
「ふうん?」
透かした返事をする沖田は、彼もまた同じ授業だったからこの時間までいるわけで、のこのこと私について此処までやって来た。たぶん馬鹿にするのが目的ではないかと思う、こいつはそういう奴だ。
ぴょんっと跳ね上がってみるも、無惨。
「先輩、パンツ見えるよ」
沖田にさらっと言われ、為す術なくなってしまう。
「………」
悔しい。
が、どうしようもない。
「あれ、どこ行くんですか先輩」
「帰るんです」
私は諦めると踵を返して、雨の中を歩いて帰ることに決めた。
この時間では購買も閉まっている、仕方がない。
―――と。
「…素直じゃないなあ」
不意に手が掴まれた―――と思うと、振り返った私の目には、片手で悠々と私のロッカーから傘を取り出す沖田の姿が映った。
「…頼んでません」
「いいよ、僕が勝手にやったことだから」
彼は呆れたように笑った。
「その代わり、僕も入れてくれるかな」
傘忘れちゃったんだよね、と飄々と言ってのける彼に、私はしばらく悩みに悩んで、そして頷いた。
沖田と帰るのは、当然初めてだった。
「雨もたまにはいいよね」
何が「いいよね」だ。
全然よくない。
だけど私は気付いていた、沖田が私に合わせて歩幅を小さくしてくれていること。
他の人とでは私が小走りするなんてこと、いっぱいあるのに。
おまけに傘まで持ってくれて、でも折り畳み傘は小さいから、私の方に傾けてくれているのにも気付いていた。
―――こいつ、意地悪なんだか優しいんだかわからない。
「……ありがとう」
私は聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう呟いた。
ちらりと横、正しくは斜め上を見遣るが、沖田は涼しい顔で歩いている。
「………あのさ、先輩」
唐突に、沖田は切り出した。
「こわいから、手握ってもいいかな」
……こわい?
また何かからかっているのかと思って沖田を見上げるが、彼は私の返事を待つように目を細めて見返すだけで。
「―――なにが」
どきん、と私の胸が鳴った。
沖田は綺麗な目で私を見る、いつだって。
「先輩、小さいから気付かないうちにどっか行っちゃいそうで」
また、どきっと胸が鳴る。
どうしちゃったの、私も沖田も。
そんな真っ直ぐな目で言われたら、私。
「……いい、よ」
断れない。
沖田の手が、そっと私の手を包んだ。
大きくて、温かい手。
「先輩」
沖田がきゅっと指の間を握って言った言葉に、
私は頷いた。
「好きだよ」
*end
拍手有り難うございます。
リクや感想など、宜しければお送り下さいませ。
あなたの一言で頑張れます。