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「共学が見てみたい、って?」


帰りの満員電車の中、平助は私を守るように立っていた。
その大きな目が単純な疑問に見開かれる。

「うん」



何気なく発した言葉だったけれど、嘘ではない。
私は小さく頷いた。


「何でまた」

「私、ずっと女子校だったから」



ああ、と平助は苦虫を噛み潰したような顔をした。
理由は簡単に想像できる。おおかた私と付き合うのがどれだけ大変だったか思い出しているのだろう。

いわゆるお嬢様校に通う私は、この歳になって初めて男の人と付き合ったのだ。
幼馴染みである彼を彼氏として両親に紹介したとき、平助ががっちがちに固まっていたのを覚えている。










「じゃあさ、来てみるか?」


平助の口から、予想だにしなかった言葉が飛び出した。



「……え?」


「見てみたいんだろ?」



目を丸くする私に、平助は事も無げにそう言ってのける。

「もちろん無理にとは言わねーけどさ。うちの学校、来てみれば?」











SCL◆藤堂平助◆ルーズリーフの秘め事









開けっ放された校門に、やる気のなさそうな守衛さん。
他人事ながらこんなんで大丈夫なのかと心配してしまうが、学生の人たちはさして気にする様子もなく気怠そうに棟に入っていく。


「な、言っただろ?」


成る程、平助の言う通り私は難なく彼の学校に潜入することができた。同じ駅の圏内で進む方向が真逆というだけで、これほどまでに私の通う女子大と違うとは凄い発見だ。



「ところで、平助」



私は兼ねてからの疑問を口にしてみた。



「ん?」

「なんでそんなに楽しそうなの?」


普通こういう場合、楽しみなのは私の方じゃないだろうか。
いや、私だって楽しみなんだけど―――平助のが楽しそうとは、一体どういうことなのか。


「そっ、それは………」



平助は急に口篭ると、顔を赤らめて目を逸らした。
彼のころころ変わる表情が、私は好きだ。



「お前を紹介できるからだろ!」

「…え?」




私もこの一言で赤くなったに違いない、まさか紹介してくれるとは思わなかった。
でも、なんて紹介するんだろう。
ちょっとだけ不安と期待が入り交じり、私はぎゅっと平助の手を握った。
そうしたら平助も当当然のように握り返してくれて。


「ほっ、ほら、行くぞ!」

「…はい」


私たちはぎこちなく笑顔を交わして一つの棟に入っていった。











「でも、本当に授業まで出ていいのかな?」

「大丈夫だって!オレの友達も連れて来てたし」

廊下を平然と男女が通りすがっていく。私にしてみれば異様な光景だった。


「…そういうもんなの?」

「そういうもんだって。大講堂だから心配いらねーよ」

ぐっと拳を握って見せる平助に続いて、私はどきどきしながらその教室に入った。


―――圧巻。


文字通り男女入り交じって座っていることもそうだか―――人前で平気でいちゃついているカップルまでいる。


「……すごい」

「だろっ!?」



平助はきらきらと目を輝かせた。
そして、



「おーい、総司!一君!」

友達を見つけたらしく私を引っ張って駆けていく。
………犬みたいだ。


平助が駆け寄った先には、すらりと背の高い涼しげな目元の美青年と、黒っぽい服に身を包んだ無駄のない動きのこれまた美青年がいた。



「お早う、平助。で、誰その可愛い子」

背の高い方の美青年が鋭い目で私を見た。
やっぱり来ちゃいけなかったんじゃ…と恐縮する私に気付かず、平助は自慢気に胸を張った。

「前から言ってただろ?オレの彼女!」


……前から言ってたんだ…。


辺りにも聞こえる大きな声で断言する平助。
恥ずかしいけれど、彼の恋人というのはすっごく幸せなことかも知れない。だってこんなに堂々と公言してくれるんだもの。


「この美人さんが?…嘘はよくないよ平助」

「だな。あんたも無理して平助に付き合ってやらなくていい」

「うっわ、ひでえ!」


二人が口々に言うから、私は慌てて首を振った。


「いえ、あの…平助がお世話になっております」


………なんだか親御さんの挨拶みたいになってしまったが、二人はぽかんとして私を見ている。


「なんだよマジで!こいつは本当にオレの彼女だっつーの!」


ぷんすかと怒った素振りを見せて、平助は彼らの後ろの空いている席にバッグを置き腰掛ける。


「こっちが総司で、こっちは一君っていうんだ。同じ剣道サークルの」

私も彼らのことは聴いていたけど、まさかこんなに美青年だったとは。



「沖田総司です。よろしく」

「斎藤一だ」

「宜しくお願いします、私は―――」

「あ、君のことは聞いてるよ。でもまさか、平助の彼女がこんな美人だったとはね」

「あっ、触んな総司!」


こんな調子でわいわい騒いで、私たちは楽しいひとときを過ごした。




しかし、教授が入ってくると一変。
講堂は水を打ったように静まり返った。


「…なにごと?」

平助に耳打ちすると、彼は口をへの字に結んでルーズリーフに何やら書き始めたた。
えっと、なになに。



―――土方先生は鬼なんだ。



私も釣られて口を引き結ぶ。



―――しずかにしてれば大丈夫だから


書かれた文字に私はこくこくと頷いた。
否が応にもこの状況じゃ出ていくことさえ困難だ。


平助は助手さんが配った出席カードに彼らしい字で名前を書き、それから私にも配られた行き場のない出席カードにふざけて相合い傘を描く。
こういうところはまだまだ子供っぽい、私は思わずふっと笑ってしまった。


―――あのさ


講義が始まる。
私はシャープペンを取り出してノートを写すふりをしながら、そのルーズリーフに文字を加えた。


―――なに?

こんなのは中学校ぶりくらいだろうか、少しわくわくする。





―――好きだよ





乱暴に書いて、平助はふいと顔を背けた。
………もう。
照れる、じゃない。





私はこんなに照れさせた仕返しをうーんと考えて、そして。






―――平助


彼の頬をつついてこっちを向かせると、




―――いつか

続きを書いた。











―――お嫁さんだって紹介してね?











平助はかあっと頬を染めて。






「当たり前だろ!」





講堂に響き渡る大声で、そう宣言した。









*end




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