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拍手御礼!
「………えっと」
私は少なからず動揺した。
「……だれ?」
SCL◆斎藤一◆桜の下の秘め事
学校のだだっ広い裏庭にたった一本生えている小さな桜の下でお花見をしよう、というのは名案だった。
出会いだ恋だと騒いでいる他の人たちは、表の庭でどんちゃん騒ぎをしている。
お陰で私たちはゆっくりとお花見をすることができた―――の、だけど。
各々が昼休みが終わると教室に向かい、私も授業に向かった。
ここまではいい、何の問題もない。
ところが行ってみたら誰一人いなくて、掲示板を見に行ったら休講。
普段から大して掲示板なんて見ないのが私の悪いところだ。
えーと、それで。
そのことを友達にメールしたら「あたしたちの縄張りを守っといて!」なんて言うからこうして一人寂しく桜の下に戻ってきた私。
そして私たちが敷いておいたビニールシートの上には―――
一人の男の子が、いた。
「も…もしもーし」
遠巻きにしつつ我ながら間抜けな呼び掛けをしてみるものの、反応はない。
や、でも急病とかで倒れてる人という可能性もなきにしもあらずだ。
私はいざとなれば大事に関わってしまう覚悟を決めて、そろりそろりとその人に近付いた。
遠くから見た感じでは男の子らしい、ということしかわからなかったが、暗色の服に身を包んだ彼の横顔は意外にもというかなんというか、くっきりとした目鼻立ちですごく綺麗だ。
私は息を呑んで彼の顔に少し耳を近付けた。
―――――と。
微かな規則正しい呼吸の音がする。
よかった、死んではいないみたいだ。
だがまた気は抜けない。
「あの、大丈夫ですか?」
確か教習所では、意識の確認をするときは声をだんだん大きくしていくと習った―――はず。
私は取り敢えず小さな声で彼に問い掛けた。
すると。
「んん…」
びくうっ、と私は身を強張らせた。
やだ、なに、この人。
かわいい…。
しかしそこで思いも寄らぬ出来事が起こった。
さらり、私の髪が彼の顔に掛かったと思った瞬間―――
「っ!?」
驚きの言葉を発する間もなく、私の視界は反転していた。
「……ん……」
僅かに声を漏らした口が私の顔の真ん前にある。
―――つまり、上手いこと首に抱き付かれていた、ということで。
「~~~っ!」
こ、これ、どうしよう…?
頭が真っ白になり、私はただ口をぱくぱくさせる。
この人―――寝ているだけだ。
起きてほしいような絶対に起きてほしくないような………微妙な心境である。
だが私の気も知らず、何度か声を掛けたからだろう、彼は確実に眠りから目覚めようとしていた。
うっすらと目蓋が持ち上がり、瞳がさ迷い、そして私を捉える。
濃藍の瞳は一片の曇りもなく、かなりの美青年だった。
「………何故」
寝惚けているのか、覚束ない口調でそれだけ呟く。
しかしみるみる内に彼の顔は驚きと焦燥に染まっていった。
「す、すまな…っ」
すぐにでも私を突き放そうとする彼。
だかその腕は急にぴたりと止まり、
―――何故か私を再び包み込んでいた。
「なんっ…!?」
「静かに」
彼は短く答えると、ビニールシートの余白をガバッと私たちの上に被せてしまった。
とくん、とくん。
心臓が激しく脈打つ。
そして刹那、
私の耳にきゃあきゃあと賑やかな笑い声と話し声が届いてきた。
―――もしかして、この何とも形容し難い状況を隠すために?
いや聞かずともそうなのだろう、その証拠に彼はじっと息を潜め耳を傍立てている。
私だってあのままむっくり起き上がって桜の下でいちゃついてたなんて思われたら恥ずかしいったらない。
足音は遠ざかっていくけれど、私は心臓の音が聞こえてしまわないかと案じていた。
「……あの」
誤魔化すように小声で彼に囁き掛ける。
「此処で、なにしてたんですか?」
彼はその綺麗な目を少し瞠って私を見つめると、ばつが悪そうにそれを逸らした。
「…花見をしていたら」
最早私たちの取っておいた場所、なんてどうでもいい。
私は彼の形の良い唇から紡がれる声に全ての神経を集中させていた。
「いつの間にか眠ってしまい…あんたを猫と間違えて」
抱き付いた、と。
恥ずかしげに揺れる言葉に、私は思わずくすくすと笑った。
そうすると、ふっ、と弛む彼の表情。
だがどきっとして見つめると、すぐに微笑みを消してしまった。
「…もう、いいだろう」
彼は私たちを覆っていたビニールシートを徐に退けた。
眩しい光が射してきて、ピンク色の花弁が再び私たちの上に舞い降りてくる。
「すまなかったな」
「いえ…」
手を差し伸べてもらい立ち上がると、もうお別れが迫ってきていることを告げられたようで、私の表情はほんの少しそれを惜しむ。
すると、彼は不意に口を開いた。
「斎藤一だ」
宥めるような口調、だけど教えられた名前に私はちょっとだけ胸が弾んで。
「あ、私は―――」
「知っている」
―――どうして?なんて聞くのも忘れるほど、彼の姿に見惚れてしまった。
今日のことは秘密だな、と言って去っていく後ろ姿が。
いつしか、横顔に変わることを。
*end
the・草食系男子
拍手有り難うございました。
リクや感想、宜しければどんどんお送り下さいませ。
あなたの一言で頑張れます。
拍手御礼!
「………えっと」
私は少なからず動揺した。
「……だれ?」
SCL◆斎藤一◆桜の下の秘め事
学校のだだっ広い裏庭にたった一本生えている小さな桜の下でお花見をしよう、というのは名案だった。
出会いだ恋だと騒いでいる他の人たちは、表の庭でどんちゃん騒ぎをしている。
お陰で私たちはゆっくりとお花見をすることができた―――の、だけど。
各々が昼休みが終わると教室に向かい、私も授業に向かった。
ここまではいい、何の問題もない。
ところが行ってみたら誰一人いなくて、掲示板を見に行ったら休講。
普段から大して掲示板なんて見ないのが私の悪いところだ。
えーと、それで。
そのことを友達にメールしたら「あたしたちの縄張りを守っといて!」なんて言うからこうして一人寂しく桜の下に戻ってきた私。
そして私たちが敷いておいたビニールシートの上には―――
一人の男の子が、いた。
「も…もしもーし」
遠巻きにしつつ我ながら間抜けな呼び掛けをしてみるものの、反応はない。
や、でも急病とかで倒れてる人という可能性もなきにしもあらずだ。
私はいざとなれば大事に関わってしまう覚悟を決めて、そろりそろりとその人に近付いた。
遠くから見た感じでは男の子らしい、ということしかわからなかったが、暗色の服に身を包んだ彼の横顔は意外にもというかなんというか、くっきりとした目鼻立ちですごく綺麗だ。
私は息を呑んで彼の顔に少し耳を近付けた。
―――――と。
微かな規則正しい呼吸の音がする。
よかった、死んではいないみたいだ。
だがまた気は抜けない。
「あの、大丈夫ですか?」
確か教習所では、意識の確認をするときは声をだんだん大きくしていくと習った―――はず。
私は取り敢えず小さな声で彼に問い掛けた。
すると。
「んん…」
びくうっ、と私は身を強張らせた。
やだ、なに、この人。
かわいい…。
しかしそこで思いも寄らぬ出来事が起こった。
さらり、私の髪が彼の顔に掛かったと思った瞬間―――
「っ!?」
驚きの言葉を発する間もなく、私の視界は反転していた。
「……ん……」
僅かに声を漏らした口が私の顔の真ん前にある。
―――つまり、上手いこと首に抱き付かれていた、ということで。
「~~~っ!」
こ、これ、どうしよう…?
頭が真っ白になり、私はただ口をぱくぱくさせる。
この人―――寝ているだけだ。
起きてほしいような絶対に起きてほしくないような………微妙な心境である。
だが私の気も知らず、何度か声を掛けたからだろう、彼は確実に眠りから目覚めようとしていた。
うっすらと目蓋が持ち上がり、瞳がさ迷い、そして私を捉える。
濃藍の瞳は一片の曇りもなく、かなりの美青年だった。
「………何故」
寝惚けているのか、覚束ない口調でそれだけ呟く。
しかしみるみる内に彼の顔は驚きと焦燥に染まっていった。
「す、すまな…っ」
すぐにでも私を突き放そうとする彼。
だかその腕は急にぴたりと止まり、
―――何故か私を再び包み込んでいた。
「なんっ…!?」
「静かに」
彼は短く答えると、ビニールシートの余白をガバッと私たちの上に被せてしまった。
とくん、とくん。
心臓が激しく脈打つ。
そして刹那、
私の耳にきゃあきゃあと賑やかな笑い声と話し声が届いてきた。
―――もしかして、この何とも形容し難い状況を隠すために?
いや聞かずともそうなのだろう、その証拠に彼はじっと息を潜め耳を傍立てている。
私だってあのままむっくり起き上がって桜の下でいちゃついてたなんて思われたら恥ずかしいったらない。
足音は遠ざかっていくけれど、私は心臓の音が聞こえてしまわないかと案じていた。
「……あの」
誤魔化すように小声で彼に囁き掛ける。
「此処で、なにしてたんですか?」
彼はその綺麗な目を少し瞠って私を見つめると、ばつが悪そうにそれを逸らした。
「…花見をしていたら」
最早私たちの取っておいた場所、なんてどうでもいい。
私は彼の形の良い唇から紡がれる声に全ての神経を集中させていた。
「いつの間にか眠ってしまい…あんたを猫と間違えて」
抱き付いた、と。
恥ずかしげに揺れる言葉に、私は思わずくすくすと笑った。
そうすると、ふっ、と弛む彼の表情。
だがどきっとして見つめると、すぐに微笑みを消してしまった。
「…もう、いいだろう」
彼は私たちを覆っていたビニールシートを徐に退けた。
眩しい光が射してきて、ピンク色の花弁が再び私たちの上に舞い降りてくる。
「すまなかったな」
「いえ…」
手を差し伸べてもらい立ち上がると、もうお別れが迫ってきていることを告げられたようで、私の表情はほんの少しそれを惜しむ。
すると、彼は不意に口を開いた。
「斎藤一だ」
宥めるような口調、だけど教えられた名前に私はちょっとだけ胸が弾んで。
「あ、私は―――」
「知っている」
―――どうして?なんて聞くのも忘れるほど、彼の姿に見惚れてしまった。
今日のことは秘密だな、と言って去っていく後ろ姿が。
いつしか、横顔に変わることを。
*end
the・草食系男子
拍手有り難うございました。
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