悪戯-恋慕-
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「お今晩は、お待たせ致しました」
凛とした声に、斎藤は顔を上げた。
蝶のように艶やかな着物を着た春が恭しく頭を垂れ、照れくさそうに微笑む。
「…ずいぶん様になってきたな」
初めは春に芸妓のフリなど…と思ったが、こうして見る姿はどの花魁よりも美しいし、持ち前の嫋やかさでしっかり間者としての仕事もこなしている。
春はありがとうございます、と微笑むと、斎藤の横へちょこんと膝をついた。
「それで、今日は何かあったんですか?」
生真面目に問われて、斎藤は何だか彼女を騙しているような気になる。
こんな問いが出るのは、斎藤が何かの報を携えてきたと思い込んでいるからだろう。
何と答えたものか―――
斎藤は考えた挙げ句、
「……酒を、呑みに来た」
ぼそりと言った。
春は豆鉄砲を食らったような顔を見せ、そして言葉の意味を理解すると即座に立ち上がろうとした。
「で、では姐さまを呼んで参り―――」
「ま、待て!そうではない!」
斎藤はその手を慌てて掴む。
「きゃっ…」
「…っと、すまない」
均衡を崩した春を支えると、ふわりと良い香りが漂う。
「斎藤さん…?」
訝しげな目で見上げてくる彼女に、思わず口許を綻ばせて、斎藤は言った。
「お前の酌で呑みたい。…いいか?」
春は珍しい斎藤の笑顔に小さくたじろいだ後、はにかんで頷いた。
悪戯/恋慕。