春散りぬれど、夢染めて。
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どこに行くつもりなの、私。
いつまで、私。
「……はぁ」
溜め息をひとつ、
このままでは立てなくさえなりそうな気持ちに蓋をして立ち上がる。
あれから。
雪の積もるこの地で江戸より遅い春に、
私はまた歩き出す。
馬鹿みたいかな、私。
『嫌です』
明日の命さえわからなかったあの日、
自分が放った言葉を唇だけでなぞる。
子供だった、とは思わない。
むしろ、
あの人の優しさが、
「聞こえない」と。
あの日、駄々をこねてでもあなたから離れずに居ればよかった。
戦火の激しくなる中、
ある日の私はついに皆と離れることになった。
隊士の方の遠い親戚へ身元を預かってもらうことになったのだ。
元通り、女として暮らせば。
或いは生きて、―――また。
嘘だとわかったから、
唇を噛み締めて。
頷くしかなかったの。
ぽたり、
あの日落ちた涙は今はもう流す意味も理由もない。
だってきっと、
あなたは、
生きていてくれる。
だからね、
私も頑張って、あなたを探す。
そう信じていないと、今にも前に進めなくなりそうだ。
ふと顔を上げると、満開の桜。
―――やだなぁ、
忘れてなんかないよ。
江戸で、
京で。
大騒ぎをして皆で眺めた日も。
さよならを彩っていた日も。
思い出すの全部、
土方さん。
沖田さん、齊藤さん、
井上さん、近藤さん。
山南さん、原田さん、平助くん、
新八さん、山崎さん、島田さん。
「会いたい………」
涙ではなく、
どうしようもない想いが込み上げる。
瞼の裏の景色に見とれて暫し目を閉じた私は、
夢を、見てたのかな。
「あれ、土方さん。またいい歌でも思いついたんですか?えーと…薄紅の…」
「なっ…総司待て!それを返せ!」
「一くん、その酒はオレが奮発して買ってきたやつなんだってば!」
「なるほど、旨いな」
「ちょっ…佐之さんも!飲み過ぎだって!」
「ケチくせえこと言うなって。なぁ、齊藤」
「あはははは、土方さん、傑作ですよこれ!」
「総司……!」
皆の声がする。
「っ……!」
まって、
きえないで。
言葉に詰まる。
気づいたら、
私は声の聞こえる方へ走り出していた。
幻聴なんかじゃない。
聞き間違いでもない。
「ひでえよ皆~…」
「ああわかったわかった、ほら平助も飲め」
「僕はなんだか眠くなってきちゃったなぁ」
「ああ、確かに天気も……ん?」
近づく私の足音。
振り返る、皆。
皆、だ。
「………」
やっと立ち止まった私は、
胸が詰まりそうなほどいろんな想いでもう声も出せそうにないけれど、必死で皆をこの目に映す。
言葉はない。
ただ皆、呆然と私を見ていた。
「………」
なんて声を掛けたらいいか。
なにもかんがえられない。
そうして、暫く―――ずいぶんと長く固まっていた私、
「………##NAME1##」
あの人が名前を呼んでくれた瞬間に。
あたたかい感覚が、
身体に再び溢れ出して。
その胸に飛び込んでいた。
「土方さん」→Page.4
「沖田さん」→Page.5
「斎藤さん」→Page.6
「平助くん」→Page.7
「原田さん」→Page.8
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