副作用、恋。
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恋をしているなんて。
気づいたときには、戻れなくなっているもの。
<body background="http://id11.fm-p.jp/data/357/meltk1ss/pri/5.gif">副作用、恋。
「原田さんっ」
「……ん?」
デスクの向こうで交わされる会話を、春は微睡みながら耳にした。
「一緒にランチ行きましょ?」
―――おお、大胆。
他人事にそんなことを思う。
ふわふわした巻き髪、ぱっちり睫毛にグロスの唇。
いかにも女子とかいう言葉が似合いそうな彼女は、申し分ない笑顔で原田を誘った。
流石、モテる男は言い寄ってくる女も違う。
そんなことを考えていると、当人の原田とばっちり目が合ってしまった。
「………おう、そうだな」
しかし一瞬で目を逸らし、彼は答える。
かたん、と席を立ち、彼は大仰に喜ぶ彼女の後をついていった。
「…ふーっ…」
わたしはそれから数分後、仕事に一区切りつけて大きく伸びをする。
「あっ春、今終わったぁ?ランチ行こー!」
「んーお待たせ、行こ行こ!」
同期の女の子に誘われて、わたしは席を立った。
小さなロビーから外に出るとやっぱり寒くて、近場だからとコートを着てこなかったことを少し後悔する。
わたしたちはすぐ近くのイタリアンレストランに早足で駆け込んだ。
「んーと、トマトと茄子のパスタにホットのレモンティー」
「わたしは…ツナの和風おろしパスタとホットコーヒーで」
さっさと注文を済ませると、彼女は「ね、」と声を潜めて言った。
「なに?」
「原田さん、居るね」
その通り、奥の席には原田さんとさっきの女性が座っていた。
あんまり見たいものではないけれど、嫌でも目に付くのは原田さんがやはり目立つからだ。
「でさ、来週バレンタインだけど…春どうすんの~?」
「どうする、って言われても…チョコ、一応禁止なんじゃなかったっけ?」
そう、お返しやら何やらが大変ということで、毎年チョコは女性社員全員からという形で代表の人が公平に買ってくるのだ。
もちろん春たちもワンコイン徴収された。
「やだなぁー、そんなの守ってる人いないよー?去年の覚えてないの?」
「まあ…確かにね」
入社一年目の去年は律儀にチョコなど誰にも渡さなかったが、土方さんや原田さんに女の子がたくさん群がっていたっけ。
「チョコレートぐらいで別に目くじら立てられないって!あ、あたしちょっとお手洗い」
「いってらー」
頬杖をついて、ふ、と奥の原田さんを見る。
たった一秒、
また、目が合った。
しかも気のせいだろうか、ちょっと笑ったような。
――――チョコレート、かぁ。
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