Dear my cake.
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わたしにはそんな想いを跳ね返すなんてできなくて、小さな自分の作ったケーキと一緒に、たくさんの想いの詰まった袋を職員室に置いたまま授業を終えた。
原田先生のデスクはピンク色に染まっているし、永倉先生や山南先生のデスクも負けたものではない。
けれど土方先生のデスクには一個もチョコがなくなっていた。
なにを気にしてるんだろう、わたし。
ほうっと息を吐いて酸素を吸うと、戸締りをしに三階へ向かう。
だが、視聴覚室の前を通ったときにわたしの足は意に反してぴたりと止まってしまった。
「…ねぇ……食べてよ、歳三……」
掠れた色っぽい声。
聞いちゃいけない、
いけないのに。
うっすらと開いたドア、
わたしより数段大人っぽい女の子がワイシャツをはだけて、土方先生の上に跨がっている。
―――わたしは、眼中にない。
苦笑すらこぼれて、わたしは頭を擡げた。
「……よしっ、終わり」
最後のドアを閉じて、わたしは踵を返した。
ああ、でも職員室に向かう途中に視聴覚室を通らなきゃいけない。
致し方なく、わたしは人が見てないのをいいことに、踊り場にうずくまる。
『好きです』
そんな風に、素直になれたら。
頭は冷えるどころかのぼせ上がっていく。
湯煎にしたチョコ、甘ったるい。
「……百瀬」
「きゃっ……!!」
不意に降ってきた声に、わたしは飛び上がりそうになった。
声の主はよく知ったひと。
「ひ、じかた、せんせ……」
見上げたらすっきりと整った目がわたしを見下ろしていた。
「………なにしてんだ」
―――あなたのこと考えてました、なんて言えない。
だから立ち上がって、これは精一杯の虚勢。
「…なんでも、ありません」
わたしは答えた。
「………そうか、なら行くぞ」
土方先生はそう言ってわたしの先を歩いた。
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