White Valentine
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―――キス、しちゃった。
あたし、斎藤君と、キスした。
「………」
「おーい、百瀬ー?」
「……ダメだこりゃ…」
相変わらず居眠りがてら観察したりしてるけど、にやにやしちゃうのは止められない。
その度にぷいと顔を背けるのがまたもう可愛くて。
―――気づいてるかな、
今日がバレンタインだってこと。
あたしは密かにカバンの中の小さな箱をなぞる。
いつ渡そうか、柄にもなく悩んでた。
真横にいるからこそ、わざわざ呼び出すのもアレだし……いや普段のあたしならそんなこと気にしないで呼び出してるけど、どうも斎藤君が相手だと調子が狂う。
やっぱり帰り際になんとかして引き止めようか―――
そう、考えていたそのときだった。
「あの………」
可愛らしい声がして、あたしは何気なく視線を上げた。
教室の入り口、見馴れない女の子が立っていた。
「はじめ先輩、いらっしゃいますか?」
胸がどきりとした。
「はじめ?」
程近いところでお昼ご飯を食べていた男子が聞き返す。
「あっ、ええと、斎藤一先輩です」
あたしの手は完全に止まっていた。
「ああ、斎藤なら1組でメシ食ってんじゃ―――お、戻ってきた」
ねえ、斎藤君。
「あ、はじめ先輩っ!」
「千鶴。珍しいな」
その子、誰ですか。
「……春?」
友達が聞き耳を立てながら心配そうにあたしを見る。
あたしは気づいちゃったんだ、
がんばってがんばってやっと見れた斎藤君の笑顔が簡単に零れてることも、
下の名前で呼んでることも、
その子が大事そうに持った小さな箱にも。
「………ごめん」
精一杯友達に笑って見せると、あたしは席を立った。
二人がいる反対側の出口から教室を出て走る。
ダサいなあ、あたし。
なにを浮かれてたんだろう。
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