White Valentine
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彼は静かに椅子を引いた。
小さな仕切りに区切られた席だけれど、人気の少ない図書室ではその音も大きく聞こえる。
「マジメだね、斎藤君は」
「あんたは不真面目すぎるんだ。どれだけ寝たら気が済む」
「んー、だって眠いんだもん」
あたしたちはこそこそと板越しに話す。
窓辺から差し込む光が眠りを誘う。
こんなサプライズハピネスをくれた土方先生と原田先生に今だけは感謝だ。
「……俺は課題が終わったら帰るからな」
「えー?なんでよ、ずるい!」
「狡くなどない」
ひょこ、っと仕切りから顔を覗かせれば、斎藤君は熱心に何やら書いている。
「……あーあっわかったわかったー」
あたしは席を立って、なんかわからないけど資料を探しに行った。
「はぁあ」
斎藤君は、一年前のこと忘れちゃったのかな?
本の列を見上げる。
確か今授業でやってるのって、この辺だったっけ。
あたしは背伸びしてその本を取ろうとした。
「―――っ、と」
意外に届かないもので、ふらふらと足許が覚束無い。
そこらに置いてある踏み台でも使おうかと諦めかけた、
そのとき。
「―――これか」
あの日見た顔とおんなじ顔で、あなたはあたしを見上げたんだ。
「あ………」
「……どうした?ほら」
きっとそんなに背丈は違わないはず、
なのに心臓はばくばくと鳴り止まなかった。
「……っ」
それは突然のこと。
ぐいっ、と腕を引かれて、あたしと斎藤君はしゃがみ込んだ。
「―――」
そっと重なった感触に、あたしは瞬きすら忘れる。
「………え?」
優しく唇を離すと、彼ははっとしたように目を瞠った。
「えっ?ええっ!?」
「あっ…」
「ふむっ………!」
テンパるあたし、その口を塞ぐ斎藤君。
はふはふと失倒しそうなあたしを残して、彼はさっさと立ち上がって席に戻ってしまった。
「え…っ!?えーっ……なに…っ!!」
ちょっと、ちょっともう幸せすぎます、そんな不意打ちって反則です。
本棚の陰に隠れて、あたしは心に決めた。
―――告白しよう。
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