White Valentine
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「んん…」
あったかい小春日和。
あたしは自分の腕枕の上、寝返りを打った。
先生から隠れられる、一番後ろの真ん中の席。
夢からはがされて目蓋を薄く開ける。
ぼんやり、
滲む視界に藍色の瞳を見つけた。
彼は呆れたような目であたしを見下ろす。
『お・き・ろ』
彼の唇が無音でそう言った。
「……えへっ」
あたしはなんとなく、ピースしてみた。
ふっ、と彼の頬が弛む。
「わっ………」
どきどき、胸が高鳴った。
一気に目が覚めてくちびるからこぼれる声。
「笑っ…ふむっんん………!」
勢いよく椅子を蹴って言葉を発しようとしたあたしの口は、目にも止まらぬ早さで彼の手に塞がれた。
「………百瀬、お前は居残りだ」
土方先生が冷酷に言い放つ。
くすくす笑う声、
だけどあたしの意識は隣の席の彼―――口を塞いでいる張本人にしか向いてない。
「悪いな、斎藤」
「痛み入ります」
ああっ、勿体ない。
まるで無表情を取り戻して受け答える斎藤君を見ながら、あたしは独りごちた。
『ば・か』
またも無音で動く、くちびる。
あたしは鳴り止まぬ心臓の音を聞きながら、それを見つめた。
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「春、マジアホすぎっ!」
「としぞーの授業で居眠りとか自殺行為でしょ!」
お昼休み、大笑いする友達に囲まれながらあたしはお弁当をつついた。
四限に脱け出して買ってきたらしいハンバーガーにかぶり付いて、彼女たちは満足気だ。
「それにしてもさあ、春があの斎藤君とか似合わなすぎ!」
みんなは自由気儘に品評する。
「だよねえー!こないだ1組の南雲君にも告られてたじゃん?あっちの方が春には似合ってるって!」
「うんうん、南雲モテるし!振っちゃうとか勿体ないー!」
もぐもぐ、咀嚼しながらあたしはみんなの言い分を聞き流す。
そう、みんな言うんだ、あたしと彼は似合わないって。
端から見たらそうなのかも知れない、あんなに真面目の代名詞みたいな斎藤君と、茶髪にミニスカートのあたし、似合わないのかも知れない。
だけど彼の好きなところ、あたしは誰にも話せずにいた。
笑ってくれた顔、最高なんだ。
あたしは窓の外を見遣る。
すき、
なんだかもう、それだけで胸が一杯なんです。
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