White Valentine
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うざったそうな前髪、抑揚のない声。
帰りに彼氏を待ちながらベランダの外を眺めていたとき、偶に目にすることがあったその人。
「………あ」
その手に収まっているものを見て、あたしの口から声が漏れる。
けれど答える前に彼は納得した様子で、すこし口の端を引いて言った。
「待っていろ」
「あっ………!」
―――それ、いらないの。
あたしが言葉を紡ぐより早く、彼は見えなくなってしまった。
「……これ」
肩で息をする彼が教室に駆け込んできたのは、数分と待たずしてだった。
「大事なものなんだろう?」
ピンク色のリボンからそっと砂を払って、彼は小さなハコをあたしに差し出した。
名前も知らない、目立たないひと。
「………わかんない」
まさかいまさらの涙声で答えて、あたしはそれを受け取った。
ふわふわ、白い息が舞う。
雪が、降ればいいのに。
「………もう、落とすなよ」
彼はそれだけ言って、教室を後にした。
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